【介護の悩み】認知症の方も「わかって」います

2015/06/14

認知症の人を理解するために知っておいてほしいこと57c7cc69618eba8061a8581baf90dd15_s

日本では2004年まで認知症のことを「痴呆症」と呼んでいました。今でも認知症になることを「ぼける」と表現される方もいますね。呆けてしまうと何もわからなくなる、と思われがちですが、認知症の方も「わかって」います。

もちろん個人差はあり、認知症の進行状態によって異なりますが、何もわかっていないと思って接すると、相手をひどく傷つけてしまうことがあります。よりよい介護ライフを送るためにぜひご紹介したいことをまとめました。

 

 

①   認知症でわからなくなること

「一度成熟した知的機能が、何らかの脳の障害によって継続的に低下した状態」を認知症と言います。記憶や注意、判断などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活がこれまでどおりできなくなるといった状態です。

つまり、認知症の主な症状は、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などです。

・記憶障害
初期段階では、新しいことを覚えられない、つい先ほどしていたことを忘れてしまいます。

そのため、同じことを繰り返し聞いたり、電気やガスをつけっぱなしにしたりすることがあります。進行すると、体験そのものを忘れます。たとえば、ごはんのおかずを忘れるのではなく、食べたこと自体を忘れてしまいます。

さらに進むと、これまで「カラダで覚えていた生活習慣」たとえば、服の着替え方や歯のみがき方などを忘れたり、昔の記憶がすっぽり抜け落ちたりします。

・見当識障害
今自分がいつ、どこにいて誰と会っているか…ということを見当識といいます。認知症が進むと、一般的に時間・場所・人間関係の順でわからなくなるといいます。

初期段階では、時間の感覚がおかしくなります。今日の日付や時間、そして症状が進むにつれ朝昼晩や季節がわからなくなります。時間の次にわかりにくくなるのが場所です。よく知っているはずの場所がわからず迷子になったり、次第に自分の家がどこかわからず帰ってこられなくなったりする、ということがおきてしまいます。そして人間関係の場合は、一緒に暮らしていない人を間違えたり、家族のことを誰かわからなくなったりすることがあります。

・理解・判断力の低下
考えるスピードが遅くなる、2つ以上のことに対処できない、良いか悪いかの判断ができないなど、ものを考える力が低下します。

長い説明が理解できなかったり、自動販売機やATMの操作がわからなくなったりします。また、判断力が低下するので、訪問販売で要らないものを買わされてしまったり詐欺にあったりします。

・実行機能の低下
計画を立てて実行することが困難になります。この機能が落ちると仕事や家事の段取りが悪くなります。たとえば、これまで毎日調理をしていた人が、献立を考え・買い物をして・食材を切り・味付けをするということがチグハグになったり出来なくなったりします。

 

②   認知症の人がわかっていること

認知症の初期段階では、周囲の人よりも本人が一番「何かがおかしい」ということがわかっています。何か覚えが悪い、何か段取りが悪い…自信を失い、将来を悲観してうつ状態になる人もいます。逆に怒りっぽくなるなど感情の起伏が激しくなる人もいます。

症状が進むと失敗も増えていきます。「失敗した」ということは分かっているので、傷ついたり自信がなくなったりします。知人の母親は、焦がした鍋をいくつも台所に隠していたそうです。介護保険の訪問調査で何でもできるようにふるまったり、医師と話す際に実際とは違うことを話したりするのも、プライドの表れかもしれません。

また、様々な認知機能が落ちてわからないこと、出来ないことが増えても喜怒哀楽を感じる感情は残っているといいます。

 

③   介護のポイント

その人の性格や認知症の進行具合によって違いがあるので、一口に「認知症の人はこうだ」とはいえませんが、少なくとも相手が何もわからない「ぼけ老人」ではない、ということは心にとめておくべきだと思います。

フランスのイヴ・ジネスト氏が提唱する「ユマニチュード」という介護の技法を御存じでしょうか。NHKで紹介されていたのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。介護の現場で「問題行動が少なくなった」と注目されています。

ユマニチュードは150以上の実践技術があるそうですが、家庭での介護でも取り入れられそうなポイントを4点、紹介します。

・見つめる
相手と同じ目の高さにすることで威圧感を与えないようにして、正面から見つめ、お互いの存在が分かるようにします。

・話しかける
優しくおだやかな口調で前向きな言葉で話しかけます。

・触れる
相手の不安を和らげるようにスキンシップをとります。やさしくさすったり手を添えたりして安心してもらえるようにします。

・立つ
できるだけ自力で立てるようにしましょう。足をつかうことで寝たきり防止になります。

元気な時のことを知っている家族だからこそ、怒ったり悲しくなったり情けなくなったりすることもありますよね。でも、認知症の人は、話している内容はよくわからなくても口調や雰囲気で怒られているか察しているようです。言うことを聞いてもらいたいときには、できるだけ穏やかに話しかけるのが良いと思います。

介護される人の切ない話もよく聞きます。どうか少しでも穏やかな関係が築けますように。

この記事を書いたライター

本間 純子
本間 純子

「色々なことがあったけれど、悪くない人生だった」と要介護の父、持病がある母に思ってもらえれば。そう願って、時には激烈なケンカをしながら一緒に暮らしています。
老いや病気はきれいごとでは済まないこともありますよね。それでも前に進んでいかなければなりません。人生の先輩方や支える家族の方々が、できるだけ元気で楽に暮らせるような情報をお伝えできればと思います。
どうぞよろしくお願いします。