理解されにくい介護家族の苦悩

2015/06/14

介護保険の認定者が年々増え続けているのをご存知ですか。

2025年には団塊の世代が75歳を迎える後期高齢者に突入するという予想もあり、さらなる増加が懸念されています。
老老介護、介護家族への負担、経済的な不安…
これまでもささやかれてきた、さまざまな問題は、もはや他人事ではなくなる時代に突入しているのです。

内閣府の高齢者白書によると、平成24年1月の調査では65歳以上の被保険者のうち約423万人の方が介護保険制度のサービスの受給を受けています。また、介護が必要になった原因は、脳血管疾患、認知症、高齢による衰弱が上位を占めています。

誰もが加齢によって発症しうる疾患ばかりです。もしかしたら、明日、あなたや、あなたの家族が陥ってもおかしくないものばかりです。

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~内閣府高齢者白書より作成

 

のしかかる介護家族への負担

家族に要介護者が出た場合、家庭生活は一変します。
特に認知症の場合、欲望が顕著にあらわれることがあり、家族でも想像もつかない行動に出ることがあります。

徘徊もその顕著な例の一つです。
何をしでかすか分からない、誤飲や誤食も気をつけなければならない、目を離すことができない状態が続くのですから、精神面、体力面の疲弊はかなりのものです。

さらに重くのしかかってくるのが家計への負担です。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、介護を理由に離職する人は、年間14万人を超えています。その80%を占めているのが女性です。しかもその半数以上が40歳代、50歳代のパート主婦さんであり、一度、仕事を離れてしまえば再就職するが難しい年齢の人ばかりです。
アベノミクスの成長戦略でも取り上げられている女性の社会進出ですが、それを阻んでいるのが介護問題とも言えるかもしれません。

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~内閣府高齢者白書より作成

 

介護はストレスとの闘い

以下は、認知症になった父親の介護をした家族の体験談です。

車を運転することが好きだったという父親は、80歳を超えても毎日運転をするのが日課でした。しかし、あるとき行き慣れた場所の道順が分からなかったのです。

主治医に診断してもらうと「まだら認知症」だと言われました。役所の福祉課に相談し、要介護認定の査定を受けると、結果は「要介護3」。家族が気づかないうちに認知症を発症し、しかもかなり進行していたのです。

当初はデイサービスを受けることから始まった介護は、認知症が進行するにつれ家庭で面倒をみるのが困難になってきました。
昼夜が逆転し日中はずっと昼寝をし、夜中になると起き出す。そのうちに自分の寝ている部屋やトイレの場所が分からなくなり、父親から目を離すことができない日々が続きました。
このままでは介護する家族のほうが先に倒れると専門の施設への入所を考えはじめたとき、障害となったのが身内でした。

「まだら認知症」の場合、滅多に会わない知人や家族に会うと健常な状態になることがあり、相手に認知症だと認識してもらいにくいことが多々あります。
「こんなにしっかりしているのだから、まだ自宅で面倒をみられるのではないか」
というのが入所に難色を示した身内の意見でした。

これはほんの一例でしょう。

 

介護の実情を理解されないことも

一千の家庭があれば一千とおりの問題を抱えているのが介護です。しかし、介護はゴールの見えないマラソンのようなものです。先が見えないことへの不安と疲れがあります。

責任ある立場にいながら離職を考えているキャリア主婦。
夫婦双方の両親の介護に悪戦苦闘している主婦。
頑張っているのに夫の兄弟姉妹から厳しい口調で責められている長男の嫁。

そういった状況で、一日24時間一年365日、年中無休の介護にあたっている家族の苦悩が理解されにくいというのが現状です。

紹介した家族も、ありのままの現状を身内に伝えることで、入所にこぎつけました。
また、同じような状況の友人と情報交換をすることで、自分だけでないという安心感が生まれ、ストレスの軽減に役立ったといいます。9d43a44ac9286784c4d90fe6010e164b_s

政府も、多くの問題が注目されている認知症患者を抱える家族に対し、7つの柱からなる「新オレンジプラン」を策定し、認知症の高齢者やその家族に優しい地域づくりを推進しています。そういった公的支援を積極的に利用するのも良いかもしれません。

息の切れない介護。その方法を見つけることが、介護時代の現代には必要なことではないでしょうか。

 

【参考資料】
内閣府高齢者白書
厚生労働省 平成25年版国民生活基礎調査