離婚して音信不通の父に莫大な借金

2015/07/22

幼いころに母と離婚して音信不通だった父に莫大な借金が…!

相続は、たいてい思いがけなく起こります。心のどこかで多少予測することもありますが、なるべく考えたくないものです。
それが、借金の相続となると、驚いてばかりもいられません。早く対処しなければ、大変な目に遭います。

 

お父さんが借金を残して亡くなった?!

U子さんの両親は、U子さんが幼稚園の頃に離婚しました。その後は、父親に会う機会もなく、母親が女手一つでU子さんを育てました。U子さんは大学を卒業して就職し、結婚しました。二人の子供に恵まれて、平凡だが穏やかな日々を過ごしていました。
U子さんの母親は、60歳の定年後も再雇用されて働いていましたが、65歳になり、悠々自適の年金暮らしを始めました。

父親と母親が離婚して35年が過ぎました。その間、U子さんも母親も別れた父親に一度も会いませんでした。
ある日、U子さんのところへXXファイナンスという金融会社から手紙が届きました。U子さんの父親が1200万円の借金を残して亡くなったので、相続人であるU子さんに支払ってほしいというものでした。
U子さんは驚きました。U子さんの夫は大企業に勤務し、いい収入を得ていますが、子供達はこれから大学進学と高校進学を控えているし、住宅ローンもあるし、とても1200万円を支払うことなどできません。

母親に電話すると、母親も父親の死をまったく知りませんでした。
「私、相続を放棄するわ! 借金なんか相続することはないのよ!」
U子さんはすぐさま決心しました。

借金を残して亡くなった

 

相続放棄をしたいが、死亡時から3ヶ月過ぎている

ところが、帰宅した夫にXXファイナンスの手紙を見せると、夫は顔色を変えました。
「相続放棄はできないよ。お父さんが亡くなってから4ヶ月経っている」

借金のように負債が多い場合は、無理に相続することはありません。相続を放棄することを、被相続人(亡くなった人、この場合はU子さんの父親)が最後に住んでいた地域の家庭裁判所に申し立てればいいのです。
ところが、この申し立てる期間は3ヶ月と決められています。3ヶ月の間に、相続放棄、または限定承認の申述(申し立て)をしなければ、単純承認とみなされてしまいます。

単純承認とは、被相続人(亡くなった人)の権利や義務を無限に引き継ぐことですから、当然、借入金返済の義務も引き継ぐことになります。
ただし、家庭裁判所に考える期間を延長してほしいと願い出れば、3ヶ月を過ぎても相続放棄か限定承認か選ぶことができます。

翌日、U子さんの家へXXファイナンスの社員が訪ねて来ました。

社員の話では、U子さんの父親は小さな事業を経営していましたが、この二、三年、資金繰りが苦しくなり、銀行にも見放されてXXファイナンスから融資を受けました。亡くなる数カ月前から返済も滞っていたそうです。
父親の新しい配偶者と、その間に生まれた子供達は相続放棄を申し出て、さっさと引っ越してしまったと言います。
「お父さんが死んでから4か月経つんです。相続放棄はできません。いや、あなたが相続放棄したら、あなたのお子さん達が相続人になって借金を背負うことになるんですよ。代襲相続です」
ファイナンスの社員は強い口調で言いました。

U子さんは夫と相談して、区役所の無料法律相談に行くことにしました。

 

熟慮期間3ヶ月は相続の発生を知った時から

区役所では、日時を決めて、区民が無料で弁護士と面談して、問題解決を図れるようにしています。これは、だいたい、どこの市町村でも行っています。無料ですから、一人の面談時間は30分程度です。

U子さんは、ファイナンスからの手紙や父親の除籍謄本(死亡した人の戸籍謄本)などを用意し、相談したい要点をメモにしました。
弁護士との相談はスムーズにいきました。

相続を放棄するか、限定承認にするか、どちらにするか選ぶ期間は3ヶ月と決まっていますが、それは、U子さんが相続人であることを知った時から3ヶ月間ということになります。U子さんのお父さんがいつ亡くなろうと、U子さんが亡くなったことを知った時から3ヶ月間と考えればいいのです。

U子さんは弁護士に教えられた通り、家庭裁判所に相続放棄の申述をして、借金を背負わずに済みました。ファイナンスの社員が脅したような「代襲相続」の心配もありません。U子さんが相続放棄したところで、その子供達も相続人から外れます。

ちなみに、U子さんの父親の祖父母が財産家で、父親の死亡後に亡くなった場合は、U子さんは代襲相続ができます。つまり、祖父母の財産を相続することができます。もちろん、新しい妻との間に生まれた子供にもU子さんと同じ権利があります。

 

限定承認とは?

被相続人(亡くなった人)が「借金も多いけれど財産も相当ある」という場合、相続する財産の範囲内で負債を返済することもできます。負債を返済して、余った財産を相続することができます。これを限定承認といいます。

しかし、限定承認は、相続人が複数いる場合には、相続人全員が共同して行わなければなりません。しかも、相続債権者との間の利害調整も必要です。相続放棄のように家庭裁判所に申述すればいいというものではなく、ややこしい事務作業をしなくてはなりません。
また、負債を返すために不動産を売却する場合、値上がりしていれば「譲渡所得税」を納めなければなりません。相続財産に不動産が含まれていれば、実際に売却しなくても、譲渡所得税を納める必要もあります。

どうしても相続したい財産がある時は限定承認が便利ですが、手続きや税務が複雑なので、弁護士や税理士に相談するといいでしょう。

 

弁護士の無料相談

「弁護士に相談したいが、費用が高くて・・・」と心配する人は大勢います。そのために、市区町村では弁護士による無料相談を行っています。市区町村の無料法律相談に行く時は、必要な書類をそろえ、相談する要点を整理しておくといいようです。

また、平成18年4月10日に設立された「日本司法支援センター」通称「法テラス」という法務省所管の公的法人があります。「法テラス」では、電話や面接による無料相談を行い、必要に応じて弁護士や司法書士を紹介します。所得が一定水準以下の場合には費用の立て替えもしてくれます。もちろん、所得が一定以上あれば、無料相談の範囲を超える部分については有料となります。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。