見知らぬ兄弟姉妹が出現!遺族は…

2015/07/22

見知らぬ兄弟姉妹が出現。遺族の気持ちは…

肉親の死はつらいものです。長くわずらったあげくの別れでも、思いもかけない突然の別れでも、つらく悲しいことに変わりはありません。
そこへ、見も知らない兄弟や姉妹が現れたら、遺族は動転するばかり、どうしてよいか、わからなくなるでしょう。

 

葬儀の席へ、とんでもない弔問客

Tさんの父親は喜寿を目の前にして心不全で亡くなりました。日頃から血圧が高く、心臓の状態がよくありませんでしたが、「気分が悪い」と言い出してから48時間も経っていませんでした。
母親は呆然として泣くこともできません。葬儀はTさんと弟妹の3人でとりしきりました。父親の友人知人が訪れて、別れを惜しみました。

葬儀が終わると、父親の親友が、30代前半と思われる男女を連れてTさんに近寄って来ました。
「この二人は、あなた達の異母兄妹でね、お父さんが認知している。火葬場までいっしょに行きたいそうだ。あちらが、二人の母親だよ」
親友は葬儀場の入り口に立っている初老の女性を指さしました。

TさんもTさんの弟妹も声を失いました。母親に何と言えばいいのでしょう?

異母弟妹は何が何でも火葬場へ行くつもりで、ことわれば大騒ぎしそうな顔つきです。Tさんは迷いましたが、結局、母親には何も告げないで、その母親と子供2人を火葬場に同行させました。父の親友が気を配ってくれたので、その母子3人は騒ぎ立てることもなく、骨上げを終えると帰って行きました。

葬儀場の入り口に

 

遺産相続人はだれ?

1週間ほどして、異母弟妹二人がTさんの自宅に訪ねて来ました。

Tさんは数年前から父母の家に同居していました。古い家を二世帯住宅に改築したもので、費用はTさんの父親が負担しました。

異母弟妹の話は「遺産相続」のことで、「私達二人も相続人だ」というのです。

Tさんも母親も遺品を整理する気にもなれず、まだ相続のことなど考えてもいませんでした。しかし、異母弟妹には相続権があるので無視することもできず、とうとう母親に打ち明け、弟と妹を呼んで相談しました。

父親の戸籍を調べると、確かに二人の異母弟妹を認知していました。

このように正式な婚姻関係にない男女の間に生まれた子供は「婚外子」「非嫡出子」といいます。非嫡出子が父親によって認知されると、父親と子供の両方の戸籍に認知したことが記載されます。
認知されると、非嫡出子にも父親の遺産を相続する権利があります。

亡くなった人を「被相続人」といいます。相続は、①被相続人の直系卑属(亡くなった人の子供)、②被相続人の直系尊属(亡くなった人の両親)、③被相続人の兄弟姉妹、の順になります。
ただし、被相続人に配偶者(正式に婚姻関係にある妻や夫)があれば、配偶者は、①②③のどの場合でも、常に相続人となります。

ですから、Tさんの父親が被相続人の場合、相続人はTさんの母親(配偶者)とTさん、Tさんの弟と妹(嫡出子3人)、それに異母弟妹(非嫡出子2人)ということになります。

 

遺産分割と法定相続

遺産を相続する場合、遺言書などによる指定相続と法律による法定相続とがあります。Tさんの父親は遺言書などを残していないので、法律で決められた相続分を基準として、遺産を分割して相続することになります。

T さんの母親が全財産の2分の1を相続し、残りの半分を子供達で均等に分けます。
ここで注意したいのは、従来の法律では「非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分---民法900条4号」とされていました。しかし、2013年9月4日の最高裁判決で民法900条4号は違憲とされ、2013年12月11日に削除されました。ですから、非嫡出子と嫡出子の相続分は同じになります。

Tさん達は5人で残り2分の1の財産を均等に分割することになるので、各人は財産の10分の1を相続することになります。 

もちろん、これは、あくまで法律を基準にした分割方法ですから、親と同居している場合など、その点を考慮して遺産分割を行っても何の問題もありません。「遺産分割協議」はそのためのものです。共同相続人がよく協議して、現実に則した遺産分割を行えばいいのです。ただし、相続税は分割して取得した財産によって違ってきます。
法定相続分は、共同相続人が遺産の分割で争うような場合の目安なのです。

Tさんの異母弟妹の母親が「内縁の妻」として相続を主張しましたが、「内縁の妻」には相続権がありません。また、離婚した元配偶者も相続することはできません。元配偶者との間に生まれた子供達は、もちろん相続人になれます。

被相続人(亡くなった人)の戸籍を誕生から死亡まで細かく調べるのは、男にも女にも婚外子がいる可能性があるからです。
Tさんのように葬儀に婚外子が現れても遺族は驚きますが、戸籍を調べて婚外子の存在がわかった場合も、遺族は驚きあわてます。遺族、とりわけ残された配偶者は裏切られたように思い、死を悲しむと同時に腹を立てるでしょう。遺族の気持ちは、法律ではどうにも解決できません。

 

ええ?! 親子関係不存在確認の訴え?!

 Tさんの異母弟妹はなかなか強硬でした。「全財産の10分の1」を要求して譲らず、「Tさんと母親が住んでいる土地家屋を売却して、遺産の分け前をよこせ」と言います。Tさんは弁護士や税理士と相談し、土地を担保にして銀行から借金して支払うことにしました。Tさんの弟と妹は協力してくれました。

土地家屋を売却して、遺産の分け前をよこせ

ところが、異母弟妹はとんでもない訴えを起こしました。「親子関係不存在確認の訴え」です。

正式に婚姻関係にある夫婦に子供が生まれると、嫡出子と推認されます。婚姻届が出されてから200日経過後に生まれた子供は、夫の嫡出子と推認されます。つまり、母親は妊娠・出産を体験するので実子と確認できますが、夫は推認しかできないのです。

そして、婚姻が成立して200日経過しないうちに生まれた子供は嫡出子として推認されません。「嫡出子」にするためには、子供が生まれてから父親が認知しなければなりません。

Tさんの両親は、いわゆる「できちゃった結婚」で、Tさんは婚姻届を出してから120日目に生まれました。しかし、Tさんはまちがいなく実子とわかっていましたから、父親は改めて認知などしませんでした。

父親が自分の実子かどうかを疑う場合には「嫡出否認の訴え」ができますが、これは父親本人が子供が生まれてから1年間以内に訴え出なければなりません。ところが、同じように実子かどうかに対する疑いがある場合であっても、「親子関係不存在確認の訴え」は、いつ、だれが起こしてもいいのです。

Tさんは異母弟妹に裁判を起こされてびっくりぎょうてんしましたが、すぐに弁護士に相談し対応しました。
現在はDNA鑑定など親子関係を証明する技法も進歩しています。これらを活用することでTさんは無事に実子であることを証明できました。

DNA鑑定など親子関係を証明する技法

 

法律の落とし穴はどこにあるか、わかりません。日常生活で当り前のことが、法律では認められないこともあります。
「できちゃった結婚」の子供が相続時に思わぬ事態に直面するのも、その一例です。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。