「散骨」という選択肢…法律との関係

2015/07/28

従来の慣習にとらわれない供養観を持つ人の割合が徐々に大きくなる中、近年利用者が少しずつ増えている「散骨」。今でこそ、ひとつの葬送スタイルとしてそれなりに認められた感がありますが、実は日本の法律上グレーゾーンに入ってしまう葬送方法であることをご存じでしょうか? 自由な葬送スタイルとして話題となった「散骨」、その真実を探ってみましょう。散骨 法律

 

樹木葬、海洋葬など、お骨を自然に還す「自然葬」

死後、遺体を火葬したあとの焼骨を粉末状にして、海や空、山中で撒くなどの葬送方法を散骨と言います。土中に埋めないという点で埋葬や埋蔵と区別されます。「自然から生まれて自然に還る」という大きな流れに回帰しようという考え方で「自然葬」の一つと位置づけられています。墓石や墓標といった人工的なシンボルを用意しないことも特長です。

海の沖合で船から散骨する「海洋葬」などが最も一般的ですが、森林などで樹木の根元に散骨する「樹木葬」としての散骨や、里山で行う「里山散骨」、無人島などなど、最近はそのバリエーションも豊かになってきました。

 

「散骨」は墓地や埋葬を規定する埋墓法等の法律に抵触する恐れも

さて、この散骨について、時代の流れの中で大きな論争が巻き起こったことをご存じでしょうか? 日本には1948(昭和23)年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」があり、この中で「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域にこれを行ってはならない」と規定されています。また、刑法190条において焼骨を墓地以外の場所に撒く「散骨」は「遺骨遺棄罪」とされているようにも読めます。

こうした法律の存在から、戦後の長い期間「散骨」は違法行為と受け止められてきました。しかし、世界的にも実施されている「自然葬」を国内でも行いたいとの要求が高まるなか、明治時代に制定され、戦後の混乱期に改定された法律である「墓埋法」や刑法190条の解釈をめぐって、厚生省や法務省を巻き込んだ論争が巻き起こりました。この流れを経て、法務省では散骨について「節度を持って葬送として行われる限りは問題がない」との非公式な見解を表明しました。 

これにより「自然葬」としての「散骨」が「死体遺棄」という犯罪行為ではなく、葬送スタイルのひとつとして認められたと受けとめられました。このことは、国内での「散骨」実施を大きくあと押しし、現在では多くの事業者がこのサービスを展開しています。

 

自治体ごとの判断で分かれる、「散骨」の取り扱い

しかし、「散骨」が確立された葬送スタイルのひとつとして認識されるにつれ、それをめぐるトラブルも発生するようになりました。
海や空での実施には問題がなくても、陸地での「散骨」は周辺住民の心情的に受け入れがたい場合があり、また漁場や農地の近くで行われる場合、海産物・農産物への風評被害も懸念されるというのです。 

実際、北海道長沼町では住民の苦情を受けて、2005(平成17)年に「散骨」を規制する条例を制定しました。これをきっかけとして、各地で散骨に関わる規制が生まれつつあるのも事実です。 

これに対し、島根県隠岐郡海士町の無人島・カズラ島では、国内初の試みとして島全体を自然散骨所する試みがなされています。撒く遺骨の形状や量に独自のルールを設け、対岸には法要を執り行える慰霊施設を整備するなど、「自然葬」「散骨」への新しい取り組みが注目されているのです。

死後、遺骨を自然に還す「自然葬」の一つの形式として位置付けられる「散骨」は、過去には違法行為として長く受け止められてきました。しかし、自由な葬送を望む時代の流れにのる形で、徐々に実施が容認されてきています。もちろん、節度を持って、他人に迷惑をかけない形で執り行われることが必須ですが、新しい葬送のスタイルとして「散骨」という選択肢は大きく見れば広く受け入れられつつあると言えるでしょう。

この記事を書いたライター

スガ マヒロ
スガ マヒロ

「きれいでありたい!」「限りある人生を楽しみ尽くしたい!」 そんな欲や煩悩にまみれた「此岸」にこそ、清廉至極の「彼岸」に劣らない魅力があるはず。いつかは終わりを迎える人生を、少しでもよいものとするそんな「あがき」こそ、この世に彩りを与えるスパイス。
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