穏かな姑がすさまじい悪口…老人性うつ

2015/08/03

A子さんの姑は、しっかり者ですが、穏やかな性格で、A子さんとも長く仲よくしてきました。 

結婚して22年目、突然、A子さんは姑と同居することになりました。
でも、同居して半年・・・なんとなく姑の様子がおかしいのです。

 

お姑(かあ)さんの様子がおかしい。もしかして、老人性うつ? 

A子さんの夫は次男坊です。大企業の管理職で、子供も無事に大学生になりました。 
夫の父親は十数年前に亡くなり、母親が日本舞踊を教えながら二人の息子を育てたのです。息子が独立した後も、母親は長男夫婦と同居して、元気に日本舞踊の教室を続けていました。 老人性うつ 認知症

ところが、脱サラして事業を始めた長男が大失敗して倒産しました。長男は何もかも失い、妻とも離婚しました。
姑は住む場所もなくなり、A子さん夫婦と同居することになりました。
姑はグチ一つこぼしませんでしたが、なんとなく遠慮がちでした。「迷惑ばかりかけて申し訳ない」と、A子さん夫婦に何度も頭を下げました。 

同居して間もなく、姑が「胃が痛い」「頭が痛い」と言い出しました。便秘を気にして、便秘薬を多量に飲みます。「トイレが近いから」と、日本舞踊教室に出かけるのも、おっくうそうになりました。めったに休むことがなかったのに、教室を休みにすることがだんだん多くなりました。
食欲がなくなり、「眠れない」と訴えます。「心臓が痛い」、「心筋梗塞で死ぬかもしれない」、「貧乏になったから、病気になっても入院できない」などと心配して、ふさぎこむのです。

そして、物忘れがひどくなり、姑自身も記憶力の減退を自覚して「惚けたのかしら?」と、気にし始めました。
お弟子さん達も異変に気が付きました。
「近頃、先生は踊りを忘れてしまって、ちゃんと教えてくれない」と言うのです。 

そういった状態が続いていたのですが、ある時期から、他人に対して攻撃的になったのです。
姑が最も変わった部分と言えるかもしれません。 

A子さんに対しても、ちょっとしたことで怒り、すさまじい悪口を浴びせるようになりました。
お弟子さんも同じく姑の変化を目の当たりにすることとなりました。
お弟子さんが、「先生、その踊り、先週教わったのと違っていますよ」と言ったとたん、姑はものすごく腹を立て、お弟子に「破門する」と、どなりました。 

A子さんは姑と同居するのが耐えられなくなり、夫や友達にグチをこぼしました。
友達の一人は「もしかして、お姑さんは認知症かもしれない」と言いました。また、別の友達は「老人性うつじゃないの?」と言います。
A子さんは、どうしてよいのか、わからなくなりました。

 

認知症か?老人性うつ(高齢期のうつ病)か?

A子さんは夫と相談して、姑をかかりつけの医師に診てもらうことにしました。

「認知症かもしれないから、診てもらおう」などとは言わずに、「体調が悪いようだから、健康診断を受けたらどうか?」と説得しました。
かかりつけの内科医は、A子さんや姑自身の話をよく聞いて、検査設備の整った総合病院を紹介してくれました。 

認知症と老人性うつ(高齢期のうつ病)は症状がまぎらわしく、時には誤診することもあります。
また、認知症とうつ病を併発する場合もあるので、よく調べてもらうことが大事です。できれば、他の医師のセカンド・オピニオンを求めることも良いでしょう。

 認知症は「脳神経細胞が消失して認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす脳の病気」です。
それに対して、うつ病は、ストレス等により脳神経細胞が弱り、情報伝達がスムーズにいかなくなるため発症する心の病気です。 

さまざまな検査を受けた結果、どうやら姑は認知症ではなく、老人性うつと診断されました。

うつ病では知能の低下はないとされていますが、記憶力が低下することがあります。けれど「物忘れ」を自覚しています。認知症では、記憶力低下の自覚がありません。認知症では、自分の名前や住所、年齢など基本的な事柄まで忘れてしまいますが、うつ病では、そんなことはありません。

しきりに身体の不調や痛みを訴えるのも、老人性うつの特色です。特に、便秘や頻尿を気にします。食欲不振もうつ病の特徴です。

どちらかと言えば、認知症の方が攻撃的になりやすいのですが、老人性うつでは自分に苛立つことが多いため、他人に攻撃的になる場合もあります。
認知症は楽観的になりやすいのですが、うつ病は悲観的になりがちです。「死にたい」とつぶやき、時には、本当に自殺することもあります。

うつ病は急激に発症します。肉親や配偶者との死別や生活環境の急変をきっかけに、うつ病になる人が多いのです。
うつ病では、朝方、調子が悪く、夕方改善する人が多いようです。

 

老人性うつ病と認知症の関係 

最近、老人性うつとアルツハイマー型認知症が密接な関係にあることがわかってきました。老人性うつから軽い認知症に移り、最終的にはアルツハイマー型認知症になる人が多いことが、ヨーロッパで報告されています。それも85%という割合なのです。 
日本でも、老人性うつからアルツハイマー型認知症へ移行する人が多いようです。

また、動脈硬化症とうつ病も関係が深いことがわかってきました。うつ病の人は脳梗塞や虚血性心疾患を起こす確率が高いと言われます。

うつ病と認知症を併発する場合も少なくありません。

身近な方の様子がおかしいと思われたら、早めに医師の診察を受けることです。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。