日本人の場合、意識して宗教を選ばない限りは、どこかのお寺の檀家であることがほとんどです。
ところが、ご自身の宗旨宗派を答えられる人がどれほどいるでしょうか。
人それぞれの宗教観ですから、それは責められるようなことではありません。
しかし、自然の成り行きに任せて、両親などのお葬式を行うことになるとしたら、檀家となっているお寺の連絡先くらいは、知っておいた方が良さそうです。
檀家って? 菩提寺って?
歴史の詳細は横へ置いておきますが、江戸時代、一般の人々は例外なく、どこかのお寺の檀家になりました。
それまでお寺とは無縁だった人々も、どこかに所属しなければならなくなったのです。
本来の仏教寺院のあり方とは異なるかも知れませんが、檀家となったお寺にはお墓があり、何代にも渡ってそのお墓に入り、そこでお葬式や年忌法要などを行ってきました。
そのお寺が、その家にとっての菩提寺です。
ただ最近では、地域によっては生家との関係が希薄な人も多いので、菩提寺の存在を意識し難くなっているのかも知れません。
どうして菩提寺に連絡が必要なの?
問題はお墓です。
宗教宗派を問わない霊園などに新たにお墓を建立するなどして、すでに菩提寺にお墓がない、あるいは菩提寺のお墓に入る気がないというのであれば、それほど気にする必要はないでしょう。
檀家と言っても、単なる形式だけということでしょうから。
しかし、故人の遺骨を、菩提寺にある先祖代々のお墓に納めようということであれば、連絡は必須です。
どなたかが亡くなったら、葬儀社への連絡と同時に、菩提寺へ知らせなければなりません。
葬儀では、菩提寺の住職にお経を読んでもらわなければなりませんし、戒名をもらわなければなりません。
もしもその約束事を無視して、勝手にお葬式を済ませてしまったら、お墓に入ることを拒否されかねません。
スケジュールでさえ、先に葬儀社と日時を決めてしまったら、菩提寺の住職が来てくれない、ということもあるのです。
葬儀社に任せっきりではダメ?
もちろん、葬儀社はプロですから、きちんと心得ていて、「菩提寺はどこですか?」「お墓はお寺にありますか?」と尋ねてくれます。通常はそういったやり取りでトラブルは回避できますが、中には、聞かれたご遺族がよく知らない中で適当に答えてしまい、その葬儀社の方でお寺や僧侶を手配して葬儀を進めてしまったところ、あとで大変なことになった…という話も実際に存在します。
すっかりお葬式も終わり、戒名も与えられ、お骨になってから、菩提寺を訪れ、納骨や四十九日の法要を頼んで、住職に拒絶されるというトラブルがあるようです。
生まれた場所からあまり離れずに生活している人であれば、菩提寺の存在も認識でき、多少前後することはあっても、住職へ連絡しないということはないでしょう。
しかし、菩提寺が遠方の場合はどうでしょうか。
両親の代から、あるいは祖父母の代から、遠く離れた場所に住んでいる場合です。
わざわざそれほど親しくもない菩提寺の住職に連絡などしなくても、と考えるのも無理からぬことでしょう。
かえって迷惑かも、と思う人さえいるかも知れません。
ただ、これはビジネスの話ではなく、宗教の問題なのです。
そこにはやはり独特のルールがあると理解すべきでしょう。
連絡をすれば、たとえ遠方でも住職が来てくれることもあります。
または、同じ宗旨宗派で関係のあるお寺を紹介してくれることもあります。
あるいは、俗名で告別式と火葬だけを済ませ、葬儀自体は納骨と同時に菩提寺で行うなどの対応もできるはずです。
お葬式のやり直しや、戒名の付け直しという事態は、費用が余計にかかってしまうだけでなく、故人との気持ちの良いお別れが阻害されかねないので、十分な注意が必要だと言えます。
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