最後を美しく飾るエンゼルメイク

2015/08/20

家族同席の「エンゼルメイク」で、穏やかに“最後”を受け入れる

「エンゼルメイク」という言葉をご存じだろうか?

エンゼルメイクとはいわゆる“死化粧”の一つだが、大きく異なるのは看護師が行うという点である。病院で亡くなった患者に対して行うものである。
このメイクを家族が同席の上で行うことで、より穏やかに家族の死を受け入れられるようになるとして、注目が集まりつつある。

1950年頃にはほとんどの人が自宅で亡くなり、病院で亡くなる人は少数だった。
ところが次第に逆転し、今では8割が病院で亡くなる時代となっている。
病院でさまざまな治療、処置を受けた後に亡くなる患者は、闘病生活で顔かたちが変わっていたり、手術などによって大きな傷跡ができていたりすることも少なくない。

元気だったころの容姿を覚えている家族や親族にとって、変わり果てた姿の家族と対面することは大きな精神的ショックになることが多い。
そこで、残された家族の精神的負担をやわらげて、死を穏やかに受け入れられるようサポートする目的で、患者の逝去時に看護師などがエンゼルメイクをほどこした上で家族と対面させることがある。

看護師が私物のメイクで行うことも、病院ごとに取り決めなし

最後を美しく飾るエンゼルメイク葬儀の際には“死化粧”という形で広く行われている行為だが、もともとは身近な人に死に別れて「グリーフ」(GRIEF:悲嘆の意味)に暮れる家族を支える、グリーフケアと呼ばれる看護の一環だ。(特に「看護職がその職域で行うグリーフケア」といった意味合いで「エンゼルケア」と呼ぶことも)

ところがこのエンゼルメイク、病院によって実施の有無やその方法、予算などをきちんと取り決めているところは少数で、看護師の自発的な善意によって行われているケースも少なくない。
中にはメイク道具まで看護師が私物を使って行っていることもあるという。

一方で遺族の側からすると、安らかな死に顔で対面することで得られる心の安らぎは大きい。
そこでここ数年来、エンゼルメイクを中核に据えたエンゼルケアを、学問としてきちんと確立させその方法を向上させようとする動きが広がっている。

エンゼルメイク研究会が発足、家族参加のエンゼルメイクを推奨

2001年には作家で看護師の小林光恵さんを代表とするエンゼルメイク研究会が発足した。

従来は死後の処置といえば、いったん家族に退室してもらい、その間に看護師が処置をして白い布をかけた状態にしてから、再び家族と対面させることが多かった。
これに対して研究会では、遺体を整える行為自体を“看取り”を位置づけて家族も同席し、できれば家族自身も参加した形でのエンゼルメイクを推奨している。
家族自身がエンゼルメイクに参加することによって、よりスムーズに身内の死を受け入れることができるようになるとの考えからだ。

身内の死という人生でも大きな出来事の中、おだやかに最期を飾る余裕がある人は少数かもしれない。
一方で、化粧も含めた身体清掃や着替えなどを家族自身の手で行うことで、ゆるやかに大切な人の死を受け入れることができるようになるとの声もある。

故人との最期の別れは遺族にとってとても重要な儀式であり、こういったエンゼルメイクが一般的になるのもそう遠い未来ではないのかもしれない。