終末期患者の心に寄り添う「臨床宗教師」ってなに?

2015/10/26

近年看取りの現場では、医師、看護師、介護士以外の新たな立場から、終末期にいる人とその家族を支える、「臨床宗教師」の存在がクローズアップされています。

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「臨床宗教師」とは、宗教や宗派にかかわらず、また布教や伝道を目的とすることなく、人生の終わりを迎える患者や遺族、あるいは被災者たちの心のケアを行う宗教者(僧侶、神職、神父、牧師など)のことです。
終末期在宅医療に力を注いだ宮城県の故・岡部健医師により提唱されました。

昔から欧米では、医療・福祉施設、軍隊、刑務所などで、
そうした役割を果たす「チャプレン」という宗教者の存在が浸透しています。
「臨床宗教師」は、その日本版を目指しているといわれています。

東日本大震災での、被災者の心のケア

現在日本では「臨床宗教師」の育成が行われており、
各地で「死ぬことに対する不安」や、「家族を失った喪失感」などの苦しみを和らげる活動が始まっています。
そのきっかけとなったのは、2011年3月11日の東日本大震災でした。
震災後、宮城県宗教法人連絡協議会主催の「心の相談室」が設置されました。
そこでは、宗教や宗派の垣根を超えた多くの宗教者や医療関係者、ボランティアなど多様な立場の人が連携し、孤独にさいなまれたり、生きる目的を失ったりしている被災者の心に寄り添ったのです。

看取りの場でのニーズも高まる

こうした活動を踏まえて、2012年、東北大学に「臨床宗教師」の育成を目的とした実践宗教学寄附講座が設立されました。
人の死に関して宗教的な立場から心のケアを扱う専門講座です。
その後、龍谷大学や鶴見大学などでも講座が開かれています。

現在は、医療・介護施設や在宅の看取りの場でもその活躍が期待されています。
実際、医師や看護師、介護士では患者の死への不安や患者のグリーフ(悲嘆)ケアには限界があります。
「臨床宗教師」には、そうした医療・介護関係者と連携し、宗教者として患者を支える役割があります。
安心して人生を終えられるように、患者の話を聞いたり、家族の悲しみに向き合ったり、時にはスタッフのケアも行ったりしているのです。

 

これまで医療や介護の現場において「死」について語ることはある種タブーでした。
しかし、「死」に関して誰かに相談することにより、当事者の心の負担が大きく軽減できるようになるといわれています。

今後日本は、団塊の世代の高齢化を皮切りに多死社会を迎え、多くの看取りの場が増えます。
悲嘆や苦しみのケアのニーズはますます増えていくでしょう。
「臨床宗教師」の活動は始まってからまだ日が浅いものの、今後は認知度も高まり、活動の場も広がっていくはずです。

この記事を書いたライター

K Yoshi
K Yoshi

親が高齢になり、自分が介護者になる可能性が出てきてはじめて、ライフエンディングを意識するようになりました。
自分らしく人生を締め括るために、また大切な家族に幸せな最後を迎えてもらうためには、十分な準備が不可欠です。「終活」には前向きな意味が込められていますが、それに関連したさまざまな情報をお伝えすることで、より良い人生のエンディングを実現するお手伝いをしたいと思っています。