「ごみ屋敷」に潜む心の闇。高齢者と自己放任の心理

2015/12/10

皆さんは「ごみ屋敷」を知っていますか。情報番組やニュースなどのメディアで取り上げられることも多いため、実際によく知らないがテレビで見たことはあるという方も多いのではないでしょうか。

「ごみ屋敷」とはごみ集積場ではない場所にごみが野積みの状態で放置されている主に居住用の建物や土地のことをいいます。床を埋め尽くした家庭ごみ、家屋の外にまではみ出している電化製品や自転車など・・・。夏には悪臭や発生する虫のトラブルが深刻となり、地域の住民を悩ませています。

 

ごみ屋敷に潜む心の闇

 ごみ屋敷には一体どのような人が住んでいるのでしょう。どうして大切な自宅を、汚いごみ屋敷にしてしまうのでしょうか。ごみ屋敷の住人が、自分が出したごみを片付けられない人という理由だけではないと思います。ほかの場所からものを運び込んでしまい、ますますたくさんのものが家屋を圧迫しているというケースも多く見られるからです。ごみ屋敷には、居住者が心に抱えている闇が隠されているのです。

 ごみ屋敷になってしまう原因として様々なケースが考えられますし、本人でもはっきりとした原因はわかっていないのではないでしょうか。周りへの不信感が引き起こした自分の財産への執着や、社会・行政への怒りなども、ゴミ屋敷居住者の心理状態として報道の中で紹介されています。また捨てられているごみに自分の姿を投影し、かわいそうと思い持って帰ってしまって自宅がごみ屋敷と化してしまう場合もあるそうです。様々な理由がありますが、ただ多くの理由に共通しているのは疎外感や孤独という言葉です。

 

「自分なんかどうでもいい」という自己放任(セルフネグレクト)の心理

 自宅をごみ屋敷化する人物は、ほとんどの場合ひとり暮らしで、そして老齢だという特徴があります。ごみ屋敷の居住者は、「自己放任(セルフネグレクト)」という精神状態です。「自己放任(セルフネグレクト)」とは、ひとり暮らしなどの高齢者が生活意欲や生活能力を低下させることによって、自身の身の回りのことができない状態になることと定義されています。本人の意志による場合もありますし、精神疾患、そして社会的問題となっている認知症である場合もあります。

 自己放任(セルフネグレクト)の状態に陥ると、周囲との関わりを断ち社会からどんどん孤立してしまいます。隣近所もごみ屋敷に被害を受けているため、近隣の住人との関係も悪化してしまうでしょう。自宅のごみ屋敷化だけでなく、医療機関の受診拒否なども多く見られる状態です。

 ごみ屋敷の住人は幸福感を得ながら、ごみと暮らしているのでしょうか。もちろん近隣住民の衛生や幸福を守るために、ごみ屋敷は絶対に解消しなければならない問題ですが、迷惑をかけている本人であるごみ屋敷の居住者も幸福感を感じているようには見られないと感じました。だれにも心を開けなくなり、ものに依存する。年齢を重ねると本当に大切なものを見極められるようになるはずなのに、信頼をよせられるものは、目に見えるごみの山しかないというのは非常に孤独なことでしょう。

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 東京都足立区はごみ屋敷問題を解決するために、「足立区生活環境の保全に関する条例」にもとづき、ごみ屋敷改善のための対策への取り組みを始めました。足立区モデルに続けと、京都市も条例を施行し、条例施行から半年で三十数世帯のごみ屋敷のごみを撤去したという報告が上がっています。すでに存在してしまっているごみ屋敷は、苦しめられている近隣住民のためにも、早急に解決しなければなりません。またごみ屋敷を根本的に解消するためにも、ごみ屋敷の住人の精神的なサポートが必要です。そしてごみ屋敷予備軍といわれる高齢単身世帯の住人が孤立しないよう、行政はもちろん、地域の住人ひとりひとりが「おせっかい」意識を持つことが求められています。

この記事を書いたライター

三浦 知子
三浦 知子

幸せってどういうことなのだろうと考えたときに、私は自分らしく、その人らしくいられることなのではないかと思います。

人生の終盤をどのように過ごすかは、人間にとってとても大切なことです。世間やほかの人の価値観ではなく、ご自身が今までに培ってきた考え方を生かして豊かに過ごしていただきたい。そのお手伝いができることを、とても嬉しく思います。