遺言書は「自分がいなくなってから自分の意思や願望を実現してもらう」ために必要なものです。法的拘束力がある書類なので、本人の署名捺印が必要だったり、作成日付を明確にするなど、書式にも細かな指定があります。
特に自分で遺言書を書く「自筆遺言証書」には、加筆や訂正、文書の削除にも細かな規定があり、こうした書式に則っていない場合、その遺言書は無効となる可能性すらあるのです。
遺言書の作成を依頼したいと思ったら
「財産分与等について言及したいし、自分の思いを理解してもらいたい。なのでしっかりと遺言書を作成してほしい」といった要望に応えてくれるサービスとして、信託銀行の『遺言信託』と弁護士による『遺言書作成』が挙げられます。
まずはそれぞれがどのような特性を持っているかについて説明します。
「信託銀行」と「弁護士」について
信託銀行と弁護士が遺言書を作成する上でできることは、大きく分けて2つあります。
(1)相続について言及できる
・遺言書で相続額や割合の指定、その方法を指定することが可能
・遺産の分割を禁止することも可能
(2)財産の処分について言及できる
・相続権を持つ人間以外の人間や団体・組織などに自身の財産を渡す『遺贈』や『寄付』について指定可能
この2点は信託銀行と弁護士どちらでも可能です。また作成した遺言書を保管しておくことや、遺言書の内容通りに財産分割などを行う遺言執行についても両者共に行えます。
もちろん時間をかけて法律知識を身に付ければ、こうした内容を自分で遺言書に書き残せるわけですが、そのための労力はかなりのものとなります。
この時点で「法律や財産の専門家によって遺言書を作成・保管・執行してもらう遺言信託のほうが、家族間でのトラブル抑止になったり、相続についても適切な対応をしてくれるので、自筆遺言証書よりもリスクが少ない」とわかります。
では次に、それぞれにできないことや、一方より優れている点についてご説明しまししょう。
信託銀行の優れている点
小規模な弁護士事務所に遺言信託を依頼した場合、弁護士の病気や死去によって、遺言書の保管継続が難しくなったり、紛失の恐れがあります。一方、信託銀行は巨大な組織によって管理されているため、遺言書の管理が中長期的になっても紛失などのリスクが少ないと言えます。
また「節税対策や資産の運用方法などについてのアドバイスをもらえる」という点も重要です。信託銀行ですから、資産の運用や、その時々の情勢を鑑みた上で不動産売買をしたいといった要望も受け入れてもらえる可能性が高いです。
弁護士の優れている点
弁護士のメリットとしてまず挙げられるのが「推定相続人の除外や取消が可能」という点です。
例えば、虐待や侮辱などによって被相続人に酷い行いを加えていた推定相続人がいる場合、その推定相続人に対しての相続を取り消せます。
「未成年後見人や後見監督人の指定が可能」というのも重要です。
親権者がいない未成年者を保護するために、未成年者の監督や財産の管理を行う人間を『未成年後見人』と言います。後見監督人は未成年後見人が適正でない行為をしていないか監督する立場にあり、この指定は信託銀行にはできません。
また認知されていない子どもがいた場合、その子が生まれた時からその親の子どもであったと認知できます。認知された子供は相続人となり、財産を受け取る権利が得られます。
遺言書の作成依頼にかかる料金
遺言信託の場合、基本手数料が約200,000円~400,000円、遺言書保管料が3,000円~7,000円、遺言内容を変更する場合は100,000円~150,000円、これに加えて遺言を執行した際には、財産額に応じて手数料を支払います。
弁護士への遺言書作成を依頼した場合、手数料や遺言書作成にかかる費用が150,000円~300,000円、時間に応じた相談料、そして遺言執行時の手数料が財産に応じた割合で算出される、あるいは金額を指定され支払うことになります。
遺言書の作成を依頼するときの注意点
弁護士よりも信託銀行に依頼したほうが高額になるケースが多いため「財産が多い」「不動産など金銭以外の財産を持っている」場合には信託銀行、そうでない場合には弁護士を選ぶと費用面で恩恵を受けやすくなります。
また、弁護士にしても信託銀行にしても「相続について争いが起きる可能性が高い」と判断した場合、依頼を断ることも。遺言の内容を正しく執行してもらうためにも、家庭の事情や自分の気持ちについてもきちんと伝えられ、一緒に考えてくれる相手を遺言書作成のパートナーとして選ぶと良いでしょう。
遺言書は財産の分割に欠かせない存在です。自分の思いを確実に反映させるためにも、適切なパートナーを選び、できるだけ早い内から準備を進めておいたほうが安心ですね。
この記事を書いたライター

生き死の問題は、人生の長い時間は考えないものです。メメント・モリ(死を想え)といった言葉があるように、死について真剣に考えることで、生きている意味を見出そうとし、有意義な生活が送れると思っております。
今この瞬間も死に直面している人もそうでない人もいますが、死は誰もが通過する道です。万人に共通する「死」というテーマで執筆することによって、多くの方々に「生」を実感してもらえればと願っております。
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