介護者を襲う「介護うつ」 ストレスと上手く向き合うには

2016/01/13

介護を続けるうちに、心が乾いていくのがわかる

親の介護を続けていくうちに、だんだん無気力になっていく。

笑うこともなくなった・・・ただ、機械的に世話をしているだけ。

心が干からびていくのがわかるけれど、どうしていいか、わからない。

そんな気持ちになる介護者は、決して少なくありません。

 

疲れ果てた心が、病んでいるのでは・・・?

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親の介護は、心身ともに重労働です。

実の両親であろうと、義理の親であろうと、認知症でも、他の病気でも、介護は、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。

最初は、「親への恩返しをしよう!」「私が面倒を見ないで、誰がする?」と、意気込んでいたものの、1年、2年、3年と介護の日々が続くうちに、気力がだんだんなくなります。

「みんな、していることだ」「これくらいで音を上げるのは、だらしがなさすぎる」などと、自分を叱咤激励しているうちに、心が干からびたようになって、喜びも悲しみも怒りも、何も感じなくなることがあります。

これは、「疲れ果てた」だけではありません。

介護というストレスが長く続いたために、心が病んでいるのかもしれません。

親の介護を始める年代は、40代から50代、60代初めが多いのです。

女性は、ちょうど更年期に入る頃です。

日本女性の閉経の平均は50歳で、更年期というのはその閉経平均年齢の前後10年間、つまり45~55歳の頃を指すというのが一般的です。

閉経が近づくと卵巣のはたらきが低下していきます。その結果、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの量が急激に減少。この影響で身体に出てくるさまざまな症状を総称し、更年期症状と呼ばれています。

ほてり・のぼせ、動悸やめまい、全身の倦怠感、多汗などが代表的な症状です。

更年期の女性が、心理的・社会的に大きなストレスを受けると、その女性の性格にもよりますが、更年期のうつ症になることがあります。

子供の結婚や独立、肉親の死などがうつ症の誘因となりますが、介護もうつ症状を引き起こすことがあります。

特に介護は、肉体的負担が大きいので、更年期症状に悩む女性には想像以上につらいものとなります。排泄物の世話は、精神的にも大きな負担をかけます。

 

うつ症になりやすいのは、真面目で責任感の強い女性です。

介護をする場合も、「できるだけ自分の手で世話をしよう」と思い、少しの手抜きもしません。いい加減な介護をすることは、自分が許せないのです。

初老期というのは、「肉体的に衰えを感じる年頃」で、現在は50代後半から60代前半を意味するようです。

確かに、この頃から老眼が始まったり、徹夜仕事がきつくなったり、身体的に衰えてきたのがわかります。高血圧や高血糖値、肝機能の低下などに悩まされます。記憶力や判断力、理解力も若い頃とは違ってきます。

「身体機能の衰え」を自覚するだけでもショックなのに、社会的にも心理的にも大きな変化を体験する時期です。

「定年退職」は男女ともに、大きな変化です。社会的地位を失うとともに、収入も激減して、経済的不安が生じます。

このような社会的・心理的変化のストレスから、初老期性うつ症に陥る人が少なくありません。

まして介護という負担を抱えているのですから、うつ症になっても不思議はありません。

身体的に衰えてくると、介護はさらに重労働に感じられます。収入の減少は、この先の医療費・介護費の増加がよけい心配になります。

男女ともに、「真面目」「責任感が強い」「完璧主義」という性格が、うつ症になりやすいようです。

男女を比べると、女性の方がうつ症になりやすいという統計が出ています。

 

うつ症状とは・・・?

「心が乾いている」という感じは、うつ症状の1つです。

心が干からびてしまって、喜びも悲しみも何も感じなくなるのですね。

うつ症状は、気分的なものだけではありません。痛みなど肉体的な症状もあります。

次のような症状があれば、うつ症を疑ってみてください。

 

【精神的症状】

■気分が落ち込む
憂鬱な気分が1ヶ月以上続く

■無気力になる。
何をする気にもなれない。人に会うのが面倒に思える。

■わけもなく、いらいらする。
不安感やあせりが強くなり、いらいらして落ち着かない。

■罪悪感が強くなり、自分を責めることが多い。
根拠もなく自分の責任だと思ったり、過去の小さな失敗を気にしたりする

■喜んだり、悲しんだりできない
無関心になり、何事にも興味が持てない

■思考力が低下する
ぼんやりすることが多くなる。集中力がなくなる。ミスが多い

■口数が少なくなる

■悲観的になる

■外見を気にしない。服装にかまわない。

 

【身体的症状】

■睡眠障害
よく眠れない。夜中や早朝に目が覚める。熟睡した感じがしない。いつでも眠たい。逆に、眠りすぎることがある。

■頭痛・腰痛・肩こりがひどい

■耳鳴りがする

■めまいがして、ふらふらする

■動悸が激しい

■胃痛・腹痛・胃の不快感がある

■便秘、または下痢をする

■食欲がなくなる。または、食べすぎる。

■味覚障害
味がわからなくなる。何を食べてもおいしくない。

 

医師の治療を受けてください

更年期うつ症でも、初老期性うつ症でも、放っておいて治るものではありません。症状が悪化して、社会生活を送れなくなることもあります。

一番警戒すべきは、自殺です。

うつ症の人は衝動的に自殺することがあります。「介護に疲れ果てて自殺」というのは、うつ症のための自殺かもしれません。

うつ症の治療は「休養」「環境改善」「薬物療法」「精神改善」の4つです。

介護をしていると、「休養」と「環境改善」が難しいと思われるでしょう。

しかし、介護者が心を病んでいては、十分な介護はできません。介護サービスを活用して、しっかり休養してください。

できれば、1~2ヶ月、ショートステイの介護施設に預けるといいでしょう。その間に心身をゆっくり休めて、家族やケアマネージャーとじっくり相談し、今後の介護方法を検討してください。

まず、介護者が心身ともに健康になることです。

 

薬物療法については、お医者さんとよく話し合ってください。納得した上で、薬を服用しないと、むしろ不安が強くなります。

更年期うつ症の場合、ホルモン剤が処方されるかもしれません。お医者さんから、メリット・デメリットをよく聞いてから、服用するといいですよ。

「休養」「環境改善」「薬物療法」で、うつ症は改善します。

しかし、うつ症は、その人の性格によるところが大きいので、考え方を変えないと、再発する可能性があります。

介護は、ゴールの見えないマラソンです。長く続けるためには、考え方を少しだけ変えてください。

まず悲観しないことです。

明日のことは、誰にもわかりません。「ケ・セラ・セラ=なるようになる」と、気楽にかまえてください。明日は、明日の風が吹きます。

次に、100点満点をやめましょう。60点、50点でいいのです。

学生時代は、60点で合格し、単位がもらえました。年を取った分、甘くして、50点合格にしましょうよ。

 

作家遠藤周作さんの言葉です。「明日できることは、今日するな」

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。