増加する高齢者への虐待

2016/01/28

高齢の家族(たいていは父母)を介護していて、いつの間にか動作が荒々しくなっている。

服を着替えさせるとか、食事をさせるとか、そんな日常動作が乱暴になる。

そのようなことに気づいた時、自分で自分が恐ろしくなることは、ありませんか?

このままいくと、介護している相手・・・自分の親を虐待することになるかもしれない。

考えただけで、ぞっとしますね。

 

高齢者への虐待が増えている

2014年現在、高齢者(65歳以上)の人口は約3296万人、全人口に占める割合は25.9%に達しています。

高齢者は加齢による疾患も多く、反射神経の鈍化から事故にあうことも少なくありません。いつ介護を必要とする身になるのか、わからないのです。

要介護の高齢者の中でも、認知症を患う人が多く、2015年には250万人と推定されます。その70%近くが在宅のまま介護を受けています。

 

40~50代になると、ある日突然、介護者になってしまうことがあります。

天涯孤独の独身者以外は、父や母、義父母、親族の介護をする可能性が誰にでもあるのです。

 

介護を受ける人が増えたためでしょうか、近年、高齢者への虐待が増加しています。特に要介護の高齢者への虐待が目につきます。

高齢者への家族による虐待件数は、2013年に15,731件報告されています。

しかし、実際の虐待件数は、この数字よりも多いと思われます。高齢者虐待は、家族のみ、または介護者が息子か娘一人だけという場合に起きることが多く、外部に虐待の事実が知られにくいのです。

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また、特養老人ホームなど介護施設内における職員による高齢者虐待件数も7年連続で増え続け、2013年には前年比43%となっています。

「高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行されたのは、2006年です。つまり、「高齢者虐待防止法」を制定しなければならないほど、介護者(養護者)による虐待が増えているということです。

 

なぜ高齢者を虐待するのか?

昔、昭和60年頃のTVドラマだったと記憶しています。

夫が脳卒中で倒れ、ほとんど寝たきりになり、口も不自由になってしまいます。妻が夫の介護をする老々介護が始まるのですが、この妻の介護は虐待に近いのです。この夫は、若い頃から浮気をする、暴力をふるうと、さんざん妻を苦しめてきました。妻は、優しく介護すると見せて、夫を虐めるのです。

今でも忘れられないシーンは、夫が水の入ったコップに手を伸ばし、もう少しで届くという時、妻はコップを1cmほど遠ざけるというものでした。1cm、1cmとコップを遠ざける妻の顔に、復讐の快感が浮かび上がります。

虐められた嫁が病床の舅や姑を虐待して復讐するという話もありました。

父親から暴力をふるわれ続けた息子が、老衰した父親を虐待することも珍しくありません。

このように「復讐」も、虐待の理由になります。

もっとも、現在では、妻や嫁による復讐は少なくなりました。女性が強くなり、対抗手段ができたからです。

 

一番多い虐待理由は、介護による疲労とストレスで、心身の健康が損なわれることです。バーンアウト症状というものです。

介護者の抱える社会的・心理的負担は予想以上に大きく、慢性的に疲労・怒り・敵意・抑うつ症状・フラストレーションに悩まされています。

そのため、心身ともに疲れ切ってしまい、介護に対する関心や達成感が失われます。情緒的にもマヒしてしまい、思いやりが失われ、冷淡な態度をとるようになります。これがバーンアウト症候群です。

認知症の介護者にはバーンアウト症候群がよく見られます。中度・重度以前の軽度認知症の介護でも、40~50%の介護者に何かしらバーンアウト症があると言われます。

 

高齢者虐待は男性の介護者に多いと言われます。

特に、独身男性が一人だけで親の介護をする場合に、よく起こります。

介護は、会社の仕事のように予定通り進みません。失禁やおむつの交換など、尿や大便の始末もショックが大きく、かなりのストレスになります。家事が苦手なのに、プライドが高くて他人に手伝いを頼めません。

イライラが嵩じて、どなる、ののしる、手荒に扱うようになり、ついには、たたく、ゆさぶる、なぐるなどの暴力行為に走ってしまいます。あるいは介護放棄して、着替えもさせず、食事を与えないということになります。

 

これまでは、こうした身体的虐待(暴力行為など)や介護放棄は男性に多く見られましたが、最近では、女性にも少なくありません。女性の社会進出が盛んになり、男女の差が小さくなったためでしょう。

 

そして、もう1つ、虐待に走る理由があります。

それは「弱い者虐めの快感」です。「復讐の快感」にもつながるものです。

人間が暴力をふるうのは、相手が恐れ怯え、言うなりになる快感のためです。もちろん、この快感が理由の全てではありません。しかし、学校における虐待や幼児虐待、犬や猫の虐待において、共通するのが、「弱い者虐め」なのです。

 

人間は、だれでも心に闇を抱えています。

心の闇は、良心や理性、倫理観などで抑えこまれています。

「言うことをきかない子供や犬猫に、かっとしてお尻をたたいてしまう」ことを、誰でも1度や2度は経験しているでしょう。そして、たいていの人は、「あっ、かわいそうなことをしてしまった」と思い、それ以上のことはしません。

でも、心身が過労になり、情緒的に不安定になっていれば、怯えて小さくなる相手に快感を覚えてしまうことがあるのです。

 

高齢者虐待を避ける方法

イライラした時、乱暴にバタンと大きな音を立ててドアを閉めたりしますね。

TVドラマで見る「ちゃぶ台をバーンとひっくり返す」場面なども、怒りを物にぶつけて解消しているのです。

物にぶつけて発散できる程度のイライラならば、あまり心配は要りません。

しかし、介護が長く続くと、「物にぶつけて発散する」程度では済まなくなります。

 

高齢者虐待は、介護者が独りで、誰にも頼らずに世話をしている場合に多く起きます。

他に家族がいても、介護者が特定の一人、娘や嫁、息子に限られる場合も、虐待が起きやすくなります。

 

まず介護保険を申請して、受けられるだけの介護サービスを受けられるようにしてください。

介護ヘルパーさんに来てもらったり、デイケアサービスやショートステイを利用したりして、心身の負担を軽くしましょう。

家族全員から親戚に至るまで、応援を頼みましょう。

「自分独りで面倒を見られない」ことを恥ずかしいと思わないでください。

 

家族以外の第三者の目が、虐待防止になるのです。

 

介護の手助けを受けていても、自分の世話の仕方が手荒になっていると思ったら、どこか介護施設に入ることを考えてください。

家庭で介護できる限界にきているのです。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。