高齢経営者を襲った詐欺被害 取込み詐欺と金融コンサルタント詐欺

2016/02/09

取り込み詐欺

Gさんは下町で小さな会社を経営していました。自動車関連などの電機部品ブローカーです。

Gさんは新制中学を卒業すると、福島県から上京して電機部品の問屋に勤めました。真面目に勤め上げて、30歳で独立し、同時に結婚しました。

夫婦二人で汗水たらして働き、土地を購入して店を建てることができました。一階が店と倉庫、二階が住居です。

高度経済成長期が終わり、オイルショック・円高ショックという荒波にもまれながら、Gさんは一生懸命商売に励みました。

バブル景気が崩壊した1980年代末、Gさんの奥さんが亡くなりました。Gさんも奥さんも還暦を迎えたばかりでした。

Gさんは独りになっても商売を続けました。

厳しい経営環境が続き、3人いた従業員も1人に減らしました。

2008年、リーマンショックで、世界中が「百年に1度」という大不況(恐慌)に襲われました。

2011年、東日本大震災が起きました。

Gさんの会社は立て続けに大打撃を受け、蓄えた預貯金も底をつきました。

Gさんは80歳を過ぎていましたが、大好きな商売をやめる気にはなれません。

ある日、電話で新規の注文が入りました。小額ですが「現金先払い」です。

Gさんが取引に応じると、すぐに次の注文が入りました。

3回目の取引は、総額500万円を超える大量注文でした。支払い条件は「納品後1ヶ月後に現金振込み」に変わりましたが、Gさんは快諾しました。

1ヶ月後、1円の振込みもありませんでした。

Gさんは慌てて、取引先の本社を訪ねましたが、そこはマンションの一室で、だれもいません。倉庫も貸倉庫で、引き払った後でした。

それでも、Gさんは仕入れの支払いをしなければなりません。幸い、手形商売なので、支払いは120日後です。Gさんは、金策に駆け廻りました。

 

金融コンサルタント

この数年間、Gさんの会社は赤字続きで、銀行も信用金庫も繰り上げ返済を求めはしても、新規融資には応じてくれません。Gさんには頼りになる親戚も、会社の実情を相談できる知人もいませんでした。

Gさんは、独りで悩み続けました。

ある日、「金融コンサルタント」と名乗る男がGさんを訪ねて来ました。Gさんの取引銀行の名前を出し、「ぜひとも力になりたい」と言うのです。身なりはきちんとしていましたし、言葉遣いも態度も丁重でした。

名刺には「資金繰り119番」と記してあります。「わたしは○○銀行に勤めた経験を基にしてコンサルタントをしています。インターネットにも出ています」

と、言います。

Gさんはパソコンをいじれませんが、同業者から「経営コンサルタント」のことは聞いていました。リーマンショック後、銀行系を中心に、そういう仕事をする人が増えていました。

金融コンサルタントは、Gさんの話を親身になって聞いてくれました。Gさんはコンサルタントを信頼して、何もかも打ち明け、相談しました。

コンサルタントは、「××銀行の融資が受けられる」と言い出しました。金額は1,000万円です。1,000万円あれば、仕入れの手形を全額落とすだけでなく、資金繰りにも余裕ができます。

Gさんは、ほっとしました。

融資を受ける条件は「××銀行に定期預金があること」です。融資額の半分、少なくとも3分の1程度の定期預金が必要なのです。

Gさんはあるだけの現金をかき集め、さらに、コンサルタントに言われるまま、クレジットカードでお金を借りまくりました。今まで、1度もそんなことをしたことはなかったのですが、「融資を受けられれば、すぐに返済できる」と言われて、その気になりました。

それでも、銀行の条件を満たす金額にはなりません。不足分は、コンサルタントが話をつけることにしました。

血の滲むような思いで作った280万円を、Gさんはコンサルタントに渡しました。コンサルタントは預かり証を書き、銀行へ出かけて行きました。

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それきり、コンサルタントは姿を消しました。

 Gさんは警察に訴え出ましたが、取込み詐欺も金融コンサルタントも行方がわからず、どうすることもできません。

 

倒産して無一文

その月の末、Gさんの会社は1回目の不渡りを出しました。翌月末には2回目の不渡りが出て、会社は倒産します。

Gさんは仕入れ先を廻って、頭を下げました。

「わたしは商売が好きなんです。死ぬまで商売を続けたいんです」

Gさんは必死で訴えましたが、仕入れ先は、同情しても支援はしてくれませんでした。

Gさんの会社は倒産しました。

店も土地も銀行等の担保に入っていましたから、Gさんには何も残りません。自己破産して借金を逃れただけでも良かったのです。

「なぜ、あんな男を信用してしまったのだろう?」

取り込み詐欺で大被害を受けたばかりなのに、金融コンサルタントの口車に乗ってしまったのが、今でも不思議でなりません。

騙されたのは、Gさんが孤独だったからです。

詐欺師達は、独りで悩むGさんに、付け入ったのです。だれか頼れる人が1人でもいれば、Gさんは騙されなかったかもしれません。

今、Gさんは国民年金で暮らしています。経営が苦しくなった時に、厚生年金をやめてしまったのです。

Gさんは気力も体力も失い、ぼんやりと日を過ごしています。

国民年金では、アパート代を支払ったら、いくらも残りません。「生活保護を申請するように」勧めてくれる人もいますが、それを考える力も残っていないようです。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。