介護の仕事・・・やりがいは、どこに消えた?

2016/03/28

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「高齢者の役に立ちたい」と思って、始めた介護の仕事でも、半年、一年と過ぎるうちに、「やりがい」などどこかに消え失せてしまうことがあります。

心が折れて、「もう、やめたい」と思う人も少なくありません。

 

介護の仕事は重労働

「介護士になろう」「介護士になりたい」と思って、がんばって勉強し、「介護福祉士」の資格を取得した人もいるでしょう。

「まず介護の実務から」ということで、ホームヘルパー2級(介護職員初任者研修)やホームヘルパー1級(実務者研修)から始める人もいるでしょう。

そうして介護施設に就職したり、訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事に就いたりして、働き始めるわけです。

しかし、介護の仕事は、予想以上に大変です。

実務研修などでわかっていたはずですが、研修と実際に働くこととは大きな差があります。肉体的な負担が大きいのはもちろん、精神的にもかなりの負担になります。

訪問介護・デイケアサービス(DS)・グループホーム(GH)・特養老人ホームなど中度から重度の介護施設、と、就職先によって仕事の内容が多少異なりますが、共通するのは、身体介護は重労働ということです。

排泄支援や寝返り介助、入浴支援は、相当な力が要ります。車椅子を押して歩くのも、決して楽ではありません。

ヘルパーさん自身が腰痛に悩み、「私が車椅子に乗りたい」というほどです。

重労働の中でも、最も大変なのは、排泄支援です。

トイレに行くのを介助するのも、力が要ります。排泄後の始末を手伝い、下着を整えるのも、かなり大変です。私は母のトイレ介助をしましたが、「こんな世話までしなければならないのか・・・」と、情けなくなった覚えがあります。

寝たままで差しこみ便器を使ったり、おむつを使用したりする場合の介護は、さらに苦痛になります。尿や大便が便器やおむつからはみ出してしまった時など、「つくづく嫌になる」と言います。

仕事とは言え、実の親でもない他人の汚物を始末することは、精神的に非常な負担になるものです。ベテランの介護員さんでも、「汚物の始末はキツイ」と言います。

認知症の患者さんになると、さらに苦労が待ち受けています。

理性が働かないので、思ったことをそのまま口にしてしまいます。

「あんたは世話が下手だから、いやだ。近寄らないで」
「あんたの顔が気に入らない。あんたの世話にはならない」

新人介護員さんなら、これだけでガックリしてしまいます。介護を拒否して、暴力をふるうこともあります。「認知症だから、仕方がない」とわかっていても、腹が立ちますよね。

 

介護の仕事は低賃金

このような重労働ですが、賃金は驚くほど低いのです。

ホームヘルパーさんの時給は1200~1350円程度です。全産業の平均時給が1040円くらいですから、一見悪くないようです。

しかし、1日に訪問できる件数は限られています。移動中は時給にカウントされません。移動費用(自動車のガソリン代など)を出してくれる所と出してくれない所があります。1ヶ月の収入は、約8万円、たいした金額にはなりません。

介護福祉士が訪問介護をする場合、月収は22万円程度です。

福祉施設介護職員の平均月収は22万円弱です。全産業の平均月収が33万円弱ですから、約11万円も低いことになります。

最も資格の高いケアマネージャーにしても、20数万円と言います。

月収22万円というのは、手取りにすると18万円程度です。これでは、家族を養っていくのも、ぎりぎりいっぱいでしょう。

夜勤や休日出勤も当り前なのに、夜勤手当・休日出勤手当が出ない職場もあるようです。

これでは、「やってられない!」と思うのが当り前です。

このように低賃金なのは、いくつか理由があります。

・ 介護報酬は公定価格で、上限が低く定められている。
・介護は家族の仕事という概念が強く、「だれでもできる」と思われている。
・介護の仕事は生産性が低い。
・介護施設が必要とする費用が多額で、人件費にしわ寄せがきている。

この理由を見るだけでも、「辞めてやる!」と、言いたくなりますね。

 

介護の仕事が、本当に嫌になるのは・・・

介護の仕事は重労働で低賃金ですが、離職率は17%(2014年現在)まで下がっています。全産業の離職率が16%ですから、特に高いとは言えません。

もっとも有効求人倍率は2.60(全産業1.14)で、慢性的な人で不足です。これは、離職する人が多いことより、介護を必要とする人が増えているからです。

「きつい・きたない・低賃金(時には、危険)」でも、介護の仕事を続けているのは、お世話している高齢者の「ありがとう」「助かります」という言葉と笑顔によるところが大きいようです。

ある若いお医者さんは、研修中に高齢者の医療に当りました。その時、受け持ちのおじいさんから、クシャクシャの千円札を2枚渡され、「先生、何かあったかい物でも喰えよ」と言われたそうです。おばあさんからは、「お腹、すいているでしょ」と、お菓子をもらったそうです。低所得者の多い病院で、おじいさんも、おばあさんも、ぎりぎりの生活をしていたようです。

そのお医者さんは、研修後、老人医療を専門にしています。研修中に受けた高齢の患者さん達の好意が、よほどうれしかったのでしょう。

認知症になっていても、心の底で、人の好意をありがたく受け止めています。

わけのわからないことを言ったり、文句をつけたり、時に暴力をふるったりしても、介護員さん達に感謝しているのです。

「ありがとう」は、患者さんの心から出た言葉ですし、笑顔は心からの感謝と喜びを表しています。だからこそ、介護員さん達は、がんばれるのですね。

「辞めたい」「心が折れた」という理由をよく聞いてみると、職場の人間関係のトラブルが多いようです。これは、どの職種でも「離職理由」の上位を占めています。

介護福祉士の資格を得て、職場の介護リーダーになれば、生意気な部下や、仕事のできない新人に悩まされます。上司と部下の板ばさみになって悩むこともあるでしょう。

逆に「お局リーダー」にパワハラを受け、心身ともにヘタヘタに疲れきることもあるでしょう。

また、同僚が高齢者を虐待している事実に直面し、どうすべきか悩むことも少なくありません。

このような職場の人間関係のトラブルこそ、「介護の仕事がいやになる」本当の理由なのです。

「きつい・きたない・危険」な仕事を一生懸命にしているのに、同僚や上司から正当に評価されなければ、「いや」になって当然です。

また、慢性的な人手不足のため、資格も経験もない人を採用することも、日常的に行われています。

その中には、「他に就職先がないので、介護でもするか」とか「介護しか採用してくれる職場がない」という、「でも・しか」介護員がいます。「でも・しか」介護員の指導をするのは、並たいていの苦労ではありません。

職場の人間関係のトラブルは、上司、あるいは、その上の管理職とよく話し合ってみてください。悩みを率直に打ち明けるとともに、「こうしてはどうか?」という対策を提案してみてください。それを聞かない上司・管理職ならば、他の施設へ移ることを考えてもいいでしょう。

虐待に気づいたら、患者さんの家族に教えてください。施設上層部が虐待を隠そうとしたら、福祉事務所や無料法律相談の弁護士に訴えてもいいでしょう。

虐待を受けている患者さんの家族と協力して、虐待を防いでください。

そして、介護員さん自身の心と身体を十分に休めてください。

どんなに忙しくても、休日は遠慮なく休みましょう。時には、長期休暇をとって、心身をリフレッシュしてください。

「やる気のある介護員さん」は、どこでも喉から手が出るほど必要としています。きちんと休暇もとれない職場にいることはありません。

自分自身が心療内科にかかるようになったら、無理をしないでくださいね。1年か2年、介護の仕事を離れてみるのも、いいかもしれません。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。