後見人もあてにならない Part1

2016/04/04

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大家さんも楽じゃない

Kさんは85歳になります。

お父さんが早く亡くなったので、茶道を教えているお母さんと2人暮らしでした。お母さんを独りにするのが心配で、とうとう結婚しませんでした。

お父さんの遺産で賃貸マンションを建て、生活の心配がなかったので、むしろ独身の方が気楽だったのです。お母さんといっしょに茶道を教えるのは、趣味に近かったかもしれません。

Kさんが63歳の春、お母さんが亡くなりました。風邪が悪化して肺炎になり、入院した時は、すでに手遅れでした

Kさんはお茶の先生を続けながら、お弟子さん達に頼まれて、仲人の真似事をするようにもなりました。お茶とは関係のない人からも、縁談を頼まれるようになり、毎日が忙しく過ぎていきました。

70歳を過ぎる頃から、賃貸マンションのことで悩むようになりました。

Kさんのマンションは老朽化するのに、周辺には、新しいマンションやアパートが続々と建ちます。Kさんは不動産屋に勧められるまま、度々改修工事を行ったり、家賃を下げたりしました。

しかも、入居者がさまざまな問題を起こすようになりました。

入居している高齢の男性が認知症になったようで、カーテンに火をつけて道路に放り出し、大騒ぎになりました。

クレイマーの中年女性が、「TVの映りが悪い」「エアコンが効かない」など、ちょっとしたことで、Kさんに電話をかけてきます。早朝でも深夜でも、おかまいなしです。

家賃を滞納されて困っているうちに、夜逃げをされたこともあります。

独り暮らしの男性でしたが、洗濯機の中には汚れた衣服、洗い桶の中には飯粒のつついた茶碗、何もかもそっくりそのまま残して、消えてしまったのです。

家具や衣服を勝手に処分することはできませんから、Kさんは地方裁判所に訴えて、法的な手続きをふみました。裁判費用も処分費用も、全額Kさんの負担です。

Kさんは管理会社を頼んで、家賃の取立てなどを代行してもらうことにしました。管理料がかかりますが、このような入居者はKさんの手には負えません。

 

子宮癌?まさか・・・?!

Kさんは、若い頃から病気らしい病気をしたことがありません。

65歳の時に胆石の手術をしましたが、経過は順調で、手術後1週間で退院するほど元気でした。

でも、昔から運動や歩くことが嫌いでした。更年期の頃から太り始め、さらに身体を動かすのがおっくうになりました。

お茶室の躙口(にじりぐち)から入るのにも一苦労するほど太ってしまいましたが、血糖値も血圧も、全く問題ありません。

膝や腰が痛むようになり、近所の整体師T氏のところへ頻繁に通い始めました。T氏とは、10年前に開業した時からの付き合いです。

ある日、30年も前に閉経したのに、わずかですが出血がありました。

Kさんは驚いて、近所の医者へ行きましたが、医者は大学病院の婦人科で受診するように勧めました。

診断は「子宮体癌」でした。STAGEⅡで、即入院、手術を勧められました。

Kさんは医師の診断が信じられませんでした。80歳にもなって子宮癌になるとは・・・まさに青天の霹靂(へきれき)です。

子宮体癌は50代から60代の未婚・妊娠経験のない女性に多く発症しますが、80歳でも90歳でも子宮がある限り、癌が発生する可能性はあります。

入院することになり、Kさんは不安ばかりがつのります。

Kさんは一人娘です。お母さんも一人っ子でした。お父さんには弟が1人いて、孫も生まれていますが、Kさんとは、それほど親しい間柄ではありません。

「手術が失敗して寝たきりになったり、認知症になったりしたら、親しくもない甥に、財産を乗っ取られるかもしれない」

 

成年後見人契約

Kさんは、お茶仲間から「成年後見人」のことを聞きました。

Kさんの判断力が衰えて、財産管理ができなくなった場合、成年後見人が管理してくれるというのです。

Kさんは、「頭のはっきりしているうちに」整体師のTさんを「成年後見人」に選びました。

「認知症などで判断能力が低下した場合、療養看護や財産管理の事務について代理権を与える」という契約を、Tさんと結びました。公証人役場で、正式な書類を作りました。

Kさんは知らなかったのですが、成年後見制度には2種類あります。

法定後見と任意後見です。

法定後見は、本人・配偶者・4親等内の親族・市区町村長が家庭裁判所に申し立てて、家庭裁判所に選定してもらいます。

本人の判断力等の状態により、後見・保佐・補助の3つに分かれます。

本人の意志を尊重しながら、財産管理や各種契約の締結が安全にできるようにします。介護サービスを受ける手続きや介護施設入所の契約も手伝います。

任意後見は、本人が判断能力のあるうちに後見人を選び、判断力等知的能力に障害が出た場合、家庭裁判所に申立てて、任意後見監督人を選任してもらいます。任意後見人は、任意後見監督人のチェックを受けながら仕事をします。

幸い、子宮癌の手術は無事に終了しました。

癌の転移もなかったので、2週間ほどで退院できました。

それから5年、癌は再発もせず、Kさんは、ますます太りました。

Kさんはグルメで、お酒も好きです。あちこちのレストランや料亭に出かけますが、いつもタクシーです。

「足が痛いから歩かない。歩かないから足が弱る」という悪循環で、よく転ぶようになりました。転ぶ度に、整体師のTさんに治療してもらいますが、だんだん歩くことも難しくなってきました。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。