後見人もあてにならない Part3

2016/04/06

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守るのは区民の利益

区の弁護士と地区包括支援係はWさんの娘とTさんに、はっきり言いました。

「わたし達は、区民のKさんの利益と保護を第一に考えます」

これを聞いて、Wさんの娘は安心しました。

もちろん、Wさん夫婦も娘もKさんの相続人ですから、Kさんの財産について考えないことはありません。しかし、何より大事なのは、Kさんが自分の財産で安泰な老後を送ることです。Wさん一家には、Kさんの面倒を見る余裕がないのです。

後見人と自称するTさんも納得したようで、「Kさんから預かった貴重品をリストにして区役所に提出する」ことを承知しました。

「Wさんの娘と協力して、Kさんを支えていく」とも言います。

弁護士は、娘さんに「Tさんに利用されないように」と注意しました。

Tさんは何かにつけて、「親族のWさんの同意を得ている」と、言うでしょう。

「区としては、Kさんを保護するために、Tさんを注意して見ていくつもりです。Kさんの実印や預金通帳を勝手にTさんに引き渡したNさんというお弟子にも、注意しておく必要があります」

区の弁護士も地区包括支援係も、「これからが難しい」という顔です。

入院中のKさんは、Tさんを信頼しきっています。マンションの売却もTさん任せで、何も心配していません。

茶道教室も仲人業も、お弟子のNさんに任せておけば安心です。

「早く退院して、家に帰りたい」と願い、リハビリに精を出します。

しかし、Tさんは「任意後見契約」に基づいて、Kさんの老人ホーム入りを検討し始めました。任意後見人は財産管理と身上監護が仕事ですから、当然の行為と言えます。

「マンションを売却した金で、有料老人ホームに入れる。死ぬまでに全財産使ってしまえば、遺産相続でもめることもない」

Tさんは、Kさんを自宅に帰すことなど考えていません。

「この家も、売った方がいいな」と、Nさんに言います。

 

任意後見人は何でもできる・・・?

任意後見は、判断能力を失った時に備える制度です。任意後見人に選ばれるのは、たいてい配偶者か子供など近い親族ですが、信頼できる知人や弁護士に頼むこともあります。

日本は、「本人の意思」を尊重しますから、任意後見人が選定されていれば、法定後見人を申請することはできません。

本人が「判断能力を失ったか、どうか」の鑑定も、任意後見では不要です。

整体師のTさんが「Kさんは判断能力がない」と見たら、家裁へ「任意後見監督人の選定」を申立てればいいのです。任意後見監督人が選定されれば、任意後見契約が発効します。

任意後見監督人は後見人の仕事を監督しますが、目の行き届かないこともあります。

また、任意後見契約で、財産管理に関する手数料など「後見人の報酬」を決めておくこともできます。特に取り決めがなければ、後見人は無報酬です。

「任意後見人を決めておいたために、財産をいいようにされた」という声をよく聞きます。

親族が海外など遠くにいたり、自分の両親や舅姑の介護で手一杯だったりすると、知人に任意後見人を引き受けてもらうことになります。そうした場合は、当然、報酬も取り決めます。

目が行き届かなければ、後見人の好き勝手にできます。

高齢者を質の悪い介護施設に入れて、動産不動産を処分することもあります。

悪質な業者が後見人となれば、高額の購入契約を結ぶこともあります。

任意後見人契約を結ぶと同時に、「任意代理契約」を結んでおくと、本人の判断力があるうちでも、財産管理などを代行することができます。本人が代理人を監督するので、監督人は不要です。

怖いのは、本人が判断力を失った時です。任意代理契約は解消されないので、

監督者なしに代理人が様々の法律行為を行うことができます。

Kさんの場合も、区の弁護士が一番心配したのは「任意代理契約」です。 

不幸中の幸いで、KさんはTさんと任意代理契約を結んでいませんでした。

 

孤独な高齢者ほど他人に頼る

「人間は独りで生まれ、独りで死ぬ」と言いますが、高齢になるほど、人の温もりが恋しくなります。

ちょっとした親切や気遣いが嬉しいのです。身寄りがいないとか、親戚と疎遠になっているとか、寂しく暮らしている人ほど、他人の好意に敏感です。

Kさんは、大勢のお弟子さんや仲人を頼む母親達に囲まれて、陽気に賑やかに暮らしていましたが、心の底には秋風が吹いていたのでしょう。

治療に行く度に、愚痴を聞いてくれ、話し相手になってくれるTさんを信頼してしまったのも、無理はありません。

Tさんも、初めは好意から任意後見人を受諾したのですが、高額な報酬を約束されると、Kさんの利益より自分の利益を優先させてしまいます。

今、Kさんは、病院でリハビリに励みながら、帰宅できる日を楽しみに待っています。

Tさんはマンション売却をほぼ完了して、有料介護付き老人ホームへの入所手続きを進めています。Kさんの自宅の売却も不動産屋に相談し始めました。

Kさんの容体では、有料介護付き老人ホームへ入るのがベストでしょう。自宅へ戻っても、独り暮らしはとても無理です。

Kさんが納得して老人ホームに入所し、快適な生活ができるようにしたいものです。

区の弁護士や支援係が、Tさんを説得することを祈ります。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。