介護ロボットのいま テクノロジーは高齢化社会の救世主になるか?

2016/04/08

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65歳以上の高齢者人口が3000万人を超え、高齢化社会ならぬ「超高齢化社会」としての道を歩みはじめた日本。急ピッチで進む高齢化は、社会保障費の肥大化や介護負担の増大など、多くの問題を生み出し続けています。

その中でも特に注目されているのが「介護」の問題。
介護施設の不足から来る「介護難民」や、若い世代を中心とした「介護離れ」など、介護需要の高まりに反して業界の抱える問題は複雑さを増すばかりです。

いま、そんな介護業界の抱える問題に対し、テクノロジーで立ち向かおうという動きが起こっています。

 

介護をロボットで代行

こちらは理化学研究所と東海ゴム工業株式会社が合同で開発している介護支援ロボット「ROBEAR 」です。

映像の通り、RROBEARは横たわる人間を抱き上げ、抱いたまま移動し、抱き下ろすという一連の作業をこなすことができます。これはベットに横たわる要介護者の車椅子への移乗という、介護の世界で頻繁に用いられる動作のひとつです。ROBEARはこれを、独自の高精度触覚センサーと高い可搬性能によって可能にします。

介護人材の絶対的不足という難題に対し日本の技術者たちが提示するのが、この「ロボットによる介護アシスト」というソリューションです。ROBEARをはじめとして、多くのロボットや最新技術がいま様々なメーカーによって産み出されています。

 

さまざまなタイプのロボット

もちろん作られているのはROBEARのようないかにもロボット然としたロボットだけではありません。

例えば株式会社アマノよって開発された入浴介護ロボット「オーシャン」は、一見すると単なるユニットバスのようにしか見えません。しかし実際には介護が必要な方でも安全に入浴できるよう設計された介護ロボットです。

車椅子とユニットバスを接続し、電動昇降式のストレッチャーで要介護者をお湯に浸からせます。こうすることで入浴中の事故を防止し、さらに腰を酷使しがちな介護者の負担も和らげることができるのです。

ROBEARのような完全な人型ロボット、オーシャンのような作業補助ロボットの他には、「パワードスーツ」という選択肢も盛んに取り入れられています。

東京理科大発のベンチャー企業、株式会社イノフィス開発した「マッスルスーツ」はまさにSFに出てくるようなパワードスーツ(強化外骨格)です。モーターではなく人工筋肉を搭載した内部機構は軽量で柔らかく、事故のリスクを最小限に抑えつつも150Kgの引張力を発生させることができます。

介護離職の大きな要因のひとつに、腰痛をはじめとする怪我が挙げられます。滋賀医大の研究グループによる全国調査では、なんと介護経験者のおそよ8割が腰痛を経験しているというデータも存在します。

今回挙げた介護ロボットたちは、介護作業の効率を上げ安全性を高めるという目的の他にも、介護従事者の負担を減らし、望まぬ怪我やアクシデントから彼らを守るという効果も見込めそうです。

「きつい」「危険」という理由で敬遠されがちな介護業界。職場環境がテクノロジーによって変われば、介護離職の増加に歯止めをかけることができるかもしれません。

現在、介護事業におけるほぼすべての作業が手作業です。それを鑑みれば、これらのロボットが導入されることでの変化するものは少なくないように思えます。

 

介護ロボット市場は2020年までに350億円規模に

こういった介護ロボット技術の急激な発達に、市場も熱い目線を送っています。

矢野経済研究所によれば、介護ロボット市場は2020年までの5年間で350億円規模にまで膨れ上がると予測されています。2015年度の市場規模が23億円ですから、5年で15倍以上に拡大する計算です。

政府も介護ロボット市場の拡大には前向きで、「ロボット革命」は介護分野の厳しい現状を打破するものだとの見解を示しています。2015年に経済産業省より発表された「ロボット新戦略」によれば「2020年に目指すべき姿」として

・2020年までに介護ロボット市場を500億円まで拡大させる
・ロボットによる介護に対する意識改革を図る
・介護者における腰痛などの怪我リスクをゼロにすることを目指す

などの目標を掲げ、介護保険制度のロボットへの適用や、ロボット導入のための助成金を300万円まで介護事業所へ支給する用意などの施策を計画しています。

特に介護医療制度のロボットへの適用は極めて大きなインパクトを与えると期待されており、高額になりがちな介護ロボットの導入に事業者が踏み切るきっかけになるのではないかと予想されています。

 

課題は現場とのコミュニケーション

順風満帆に見える介護ロボット業界ですが、課題も少なくありません。

大きな課題のひとつは、エンジニアと介護現場とのコミュニケーション不足です。

テクノロジーの専門家であるエンジニアは、得てして技術的に高度で運用が難しいロボットを作ってしまいがちです。しかし、高度な技術を注ぎ込んでロボットを作ったが実際に現場に持ちこんでみたら、介護者側は誰もそれを使いこなせなかった…などという事例が多発しています。

操作面だけでなく、機能面でのミスマッチも多発しています。

例えば技術者がこぞって作りたがる人型ロボット、技術的にもビジュアル的にも夢のあるプロダクトですが、介護現場からの視線は冷ややかです。「人型ロボットは大きすぎて場所を取るし、機能面でもまだまだ人間に及ばない。コストも高いし、導入するメリットはほとんどない」そんな声も聞こえてきます。

さらに、介護者とロボット開発者の間でのマインドギャップも大きな課題です。

介護現場で働く介護者は、「介護」という事業に対し誇りとやりがいを抱いています。高齢者に対し丁寧で暖かみのあるケアを施すこと自体に、大きな価値を認めている場合がほとんどです。

しかし、ロボット開発者にとってみれば、介護は単なる効率化すべき「作業」です。

こうした両社のマインドギャップがエンジニアと介護者の間に心理的な距離を作ってしまい、技術交流や意見交換の機会を奪ってしまっているという意見もあります。現に、介護ロボットに関するセミナーでは、参加者はほとんどがビジネス目的の企業で介護事業者側からの参加はほとんどありません。
介護者のエンジニアのコミュニケーション不足は、介護ロボットの実現化を果たしていくうえでの最大の障壁のひとつとなっていると言っても過言ではないかもしれません。

 

2016年は高齢化対策の年

2016年の元旦、安倍晋三首相は自身のtwitterで「2016年は少子高齢化対策の年」であると宣言しました。

2012年にはかねてから懸念されていた「団塊世代の一斉退職」も発生し、日本の高齢化はますます加速の一途を辿っています。

総人口における高齢者(65歳以上)の割合は、2015年についに25%を突破し、10年後の2025年には30%を超すと予想されています。

日本に残された時間はあまり多くありません。

幸い、日本には長く培ってきたテクノロジーの蓄積と、優秀な技術者たち、強い熱意を持つ介護事業者たちという強力な武器があります。

日本を支えた世代が幸福な老後を送れるような、

また老後世代を支える若者が未来に希望を持てるような、

そういった社会が実現されることを願ってやみません。

この記事を書いたライター

小山 晃弘
小山 晃弘

ブロガー、フリーライター。
セラヴィ」「リクナビNEXTジャーナル」「ASREAD」など、さまざまな商業Webメディアで活動中。
ライブドアブログ OF THE YEAR 2015受賞

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