大好きだった母をうとましく思い始めて、はっとする時・・

2016/04/25

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お母さんの手は魔法の手

こわれたお人形も直してくれる

破いたスカートも、ちゃんともとに戻る

お母さんが料理すれば、嫌いなニンジンもおいしい

お母さんの冷たい手が、おでこの熱を冷ましてくれる

お母さん、大好き

大好きなお母さんは、どこへ消えてしまったのでしょう?

 

お母さんが認知症と診断されて、大ショック

どの家庭でも、お母さんは太陽のような存在です。

お父さんが企業戦士として戦えるのも、お母さんがしっかり家庭を護っているからです。娘や息子がどんな悩みを持ちこんでも、どんな失敗をしても、お母さんは、いつでも温かく受け入れてくれます。

そのお母さんがアルツハイマー型認知症と診断されたら、家族の受けるショックはあまりにも大きくて、呆然とするばかりでしょう。

・もの忘れが激しくて、昨日のことも覚えていない

・あんなに得意だった料理をすることができない

・好きな趣味にも関心を失い、何かする気力がない

こんな状態が続くので「もしや・・・?」と心配になって、医師に相談したものの、「まさか、認知症などであるはずがない」と、思い込んでいるものです。

ですから、診断を下された時のショックは、さらに大きくなるのです。

ショックから立ち直れないまま、お母さんの介護が始まります。

アルツハイマー型認知症は、脳内のタンパク質異常により神経細胞が破壊され死滅し、脳が委縮して神経伝達がうまくいかなくなる病気です。

脳神経の破壊は、まず大脳辺縁系の海馬周辺から始まります。海馬は記憶の管理や再生を司るので、記憶障害、もの忘れが生じます。

神経細胞の死滅が進み、判断力が低下します。調味料の選択や、気候に合った服装をすることもできなくなります。見当識障害が生じ、時計が読めなくなったり、今日が何年何月何日かわからなったりします。自分がどこにいるのか、何をしようとしているのかも、わからなくなります。

・トイレの場所がわからなくなり、失禁することもあります。

・このような「中核症状」に加えて、「周辺症状」が出てきます。

・怒りっぽくなって、すぐに大声でわめきちらす。

・「○○さんがお金を盗む」と言い出す。(もの盗られ妄想)

・目的や理由もなく、外をうろつく。(徘徊)

・入浴や着替えをいやがる。(介護拒否)

・家族の顔がわからなくなる。自分の顔がわからない。

家庭の太陽だったお母さんが失禁したりすると、家族は絶望の淵に落ち込みます。特に息子さんの受けるショックは計り知れません。

「優しくて明るい」お母さんの人格まで変わり、可愛がっていた娘の顔を見て「あんた、誰?」などと言います。

ショックを受けない方が不思議ですね。

 

大好きなお母さんを、なぜ憎む?

ショックから立ち直れないまま介護生活が始まり、お母さんの症状は、だんだん悪化していきます。ショックの波状攻撃です。

介護の負担は重くなるばかりで、心身ともに疲れきってしまいます。

絶望の闇の底で、お母さんをうとましく思い、憎しみさえ抱くことに気づいて、愕然となることもあるでしょう。

なぜ、お母さんをうとましく思うのでしょう?

なぜ、お母さんを憎むようになるのでしょう?

それは、娘さんや息子さんの心の中で、お母さんが光り輝く存在だったからです。お母さんが家庭の太陽だったからです。

認知症になったお母さんは、その「すばらしいお母さん像」を破壊し、汚しているのです。お母さんから光を奪い、冷たい岩石の塊の月にしてしまうのです。お母さんの思い出を汚す存在だから、許せないのです。

何でもすばやく簡単にやってしまったお母さんが、独りで服を着替えることもできず、もたもたしているのを見れば、涙が出ます。

「こんなお母さんを見たくない」

「こんなお母さんではないはずだ」

そう思うと、無性に腹が立ちます。お母さんに怒りの矛先を向けるのです。

「認知症という病気なのだから、しかたがない」

「お母さんが悪いのではない」

理屈では、よくわかっているのです。しかし、感情的に受け入れられないのですね。お母さんが大好きだから、よけい受け入れられないのです。

 

お母さんは生きています

アルツハイマー型認知症の患者数は年々増えています。

認知症の50%がアルツハイマー型で、男性と女性の比率は2:3で、女性の方がかかりやすいようです。2025年には、65歳以上の5人に1人がアルツハイマー型認知症になると予測されています。

どのお母さんも、アルツハイマー型認知症になる可能性があるのです。

アルツハイマー認知症になったお母さんを、憎まないようにしたいですね。

お母さんをうとんじたり、憎んだりしないですむ方法があります。

まず、「認知症と診断された」ショックから立ち直りましょう。

立ち直る方法は1つです。病気と闘うのです。

認知症も癌も心筋梗塞も、同じように「病気」なのです。認知症は決して「珍しい病気」ではありません。

癌や肺炎にかかったら、「病気と闘って治そう」としますね。認知症も同じことです。

「どうやって、お母さんの認知症を治すか?」、そのことだけを考えてください。

大好きなお母さんを、アルツハイマー症などに奪われてはなりません。大好きなすばらしいお母さんだからこそ、認知症と闘えるのです。

最近の研究で、早期発見・早期治療であればアルツハイマー認知症の進行を遅らせる可能性があるという薬が発表されています。鳥取大学医学部の教授によるアロマテラピーによるアルツハイマー認知症の治療・予防効果の研究が話題になったこともあります。

「家族の対応の仕方で、認知症が改善されたり進行を遅らせる効果の認められる場合がある」という研究結果も出ています。

お母さんと家族全員が力を合わせて、認知症と闘ってください。

昔のように「何でもテキパキできる」ことはないでしょう。でも、認知症初期であれば、まだまだ、いろいろなことができます。

お母さんができることを探してください。お母さんが何かできたら、いっしょに喜んであげてください。

しかし、時の流れに逆らうことはできません。加齢という大敵には、誰も勝てないのです。

どんなに努力しても、アルツハイマー型認知症が進行して、ついには身体機能が低下して寝たきりになってしまうこともあります。

それは、どんなに手を尽くしても、癌が進行するのと同じことです。

寝たきりになってしまっても、お母さんは、そこにいます。

お母さんの心は、家族から離れることはありません。

お母さんは、自分から輝く太陽ではなくなったかもしれません。でも、家族の愛情を受ければ、月のように輝くことができます。

家族が笑いかければ、お母さんも笑顔になれます。お母さんの笑顔が絶えなければ、うとましく思う気持も消えてしまいます。

今あるお母さんとの時間を大事にしてください。お母さんとの楽しい思い出をたくさん作ってください。

お母さんと桜を眺めたり、冷たいスイカを食べたり、お月見したりしてください。お母さんは、頭ではなく、心で家族の思いやりをわかってくれます。

お母さんが永遠に旅立った後で、悔やむことのないようにしたいものです。

「お母さんの笑顔が恋しい」と思っても、二度と見られない時が来るのです。

この記事を書いたライター

潮美 瑶
潮美 瑶

人生とは「死に至る病」と申します。
生まれ落ちた時からゴールがわかっています。50歳を過ぎる頃から、ゴールが身近に感じられるようになります。
許されるものならば、できるだけ平穏にゴールを迎えたいと思っております。穏やかに、安らかに、悔いもなく、人生の幕を下ろせたら、どんなに幸せなことでしょう。見送る遺族の悲しみも、多少薄らぐことと思います。
終活情報を伝えることで、少しでも平穏にゴールを迎える役に立つならば、私自身にも大きな意味があります。