「樹木葬」 自然を遺す、新しいお墓の形

2016/07/22

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「樹木葬」というお墓を知っていますか?

「葬」と名前がついていますが、これは葬儀の形ではなくお墓の形のこと。

一般的な「墓石」の代わりに、「樹木」を墓標とするという新しい発想のお墓です。

この樹木葬、「土に還る」というコンセプトが支持されたのか、いま日本中で注目されています。

本稿では新しい葬儀「樹木葬」の魅力に迫ります。

 

「樹木葬」とは

樹木葬とは、前述のとおり「樹木」を墓標とする新しいお墓の形です。

文学作品などではまれにみる「木を墓標に」という表現ですが、それが現実のものになったのはここ20年ほどのお話し。

1999年に岩手県一関市で行われたのが日本初だと言われています。

「樹木と共に眠る」という樹木葬のコンセプトは開始当初から強く支持され、私立霊園では次々と樹木葬を導入する施設が増えていきます。

2012年には小平霊園が都立霊園としては初の樹林墓地を設置。2014年には樹木墓地も作られました。(樹林墓地と樹木墓地の違いは、合同葬か個別葬の違い。樹林葬は一種の永代供養墓地と考えるとわかりやすい)。

こうして名実ともに墓地の形の新しいスタンダートとなった樹木葬。

しかしなぜ、多くの人が「樹木」という墓地の形に惹きつけられるのでしょうか?

 

自然の中で眠りたい、という想い

樹木葬にまつわるルポタージュ

「樹木葬という選択: 緑の埋葬で森になる」

の著者である田中 淳夫氏は、樹木葬を

「自然の一部になりたい」という現代人の想いが形になったものだと分析します。

確かに樹木葬がはじまった1999年は環境問題が衝撃をもって受け止められた時代です。

アル・ゴア元副大統領による「不都合な真実」によっていちやく有名になった地球温暖化問題や、ダイオキシンによる公害問題、南極の氷が溶けて行き場をなくすペンギンたちなど、衝撃的な情報が次々と飛び込んできたことが思い出されます。

そういった状況の中で、死後は文明を離れ、自然の中で静かに眠りたい…というニーズが湧いてくるのは、極めて自然なことがと言えます。

日本ではじめて樹木葬を始めた岩手県の知勝院は、樹木葬を

「森を作る葬儀」

と位置付けていたと言います。

自然に還ることを望む人々が、自分の墓標として1本1本木を遺していく。

それがやがて森となり、自然を蘇らせていく…という発想です。

確かに、単なる森ならいざ知らず「墓標」である森は簡単には切り倒すことができません。墓標として残された樹木は、単なる樹木とは一線を画す、後世に永く残る樹として残り続けることでしょう。

樹木葬には、そんな人々の想いが込められているのです。

 

「散骨」と「樹木葬」は何が違うの?

樹木葬のコンセプトを聞いていると「何かに近いな?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「自然に還る葬儀」

そう、いま流行りの「散骨」です。

海や森に遺骨を撒き、自然と一体化することを目指す散骨、確かに目指すところは極めて近しいと言えるでしょう。

それでは樹木葬と散骨の違いはどこにあるのでしょうか?

最も大きな違いは「墓標か残るか否か」という点にあります。

遺骨を撒いてしまう散骨では、墓標が残りません。大きく言えば海が、また山が墓標と言えるのですが、特定のモニュメントとして何かが残るということは基本的にありません。

もちろんそれが散骨のひとつの魅力であり、「後世になにも残さない」「諸行無常」という一種の美意識を体現しているわけですが、やはりそこは樹木葬と違うところでしょう。

樹木葬では、樹木がモニュメント、墓標として残ります。そして木の寿命は一般に数百年、数千年という単位になります。

そういった長期にわたり、自分の生きた証を残せるというのも、樹木葬の一種の魅力と言えるので社ないでしょうか。

また、前述したように樹木葬には「森を創る」という役割もあります。

1人が樹木葬を選択することで、1本の樹木が増える。それが連なり森になっていく。散骨が「自然に還る葬儀」であるなら、樹木葬は「自然を作る葬儀」と言えるのかもしれません。

 

子供に負担を遺さないことも魅力

また樹木葬の大きな特徴のひとつとして

「継承者が必要ない」

という点も注目に値するでしょう。

一般的な日本のお墓は「家」単位で埋葬されることが一般的です。であれば、自分のお墓があれば当然子供や孫にその管理を継いでもらわなければなりません。

しかし、樹木葬は一般的に、継承者を立てることが必須とされていません。1人に1本の樹木、という建前があるからです。

すると、子どもに負担を残したくない方や、家のお墓に入りたくない方にも、樹木葬は有力な選択肢たりえます。

一般に使用料も控えめで、一般的なお墓より費用が安いことも「負担を残さない」点での魅力です。確かに普通の墓地なら清掃などの手間が要りますが、森林ならそれほど大規模手入れは必要ありませんからね。

いま、注目が集まる樹木葬。

その魅力や特徴について本稿ではお伝えしました。

樹木葬、いかがだったでしょうか。「終活」を考える上で、ひとつの選択肢になりうえうかもしれませんね。

この記事を書いたライター

小山 晃弘
小山 晃弘

ブロガー、フリーライター。
セラヴィ」「リクナビNEXTジャーナル」「ASREAD」など、さまざまな商業Webメディアで活動中。
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